2022.11.10 政策研究
第11回 政策(教育委員会〈学校〉・環境・廃棄物・上水道等)と議会の責任・権限
議会・議員に求められる「公正な議論」、「自己懐疑」
議会が「公正な議論」を行うためには、議員が論点についてメリットを主張するだけでなく、デメリットを併せて発言することが必要である。そうでなければ、どの選択肢を選んだらよいのか比較ができないからである。
また、「公正な議論」を行う前提には、議員が自らについて懐疑的なことも求められる。議員が自らについて懐疑的になるためには、違う意見に耳を傾けることが大切である。耳を傾けるよい方法は、自分の考えを突き詰めた上で他者の意見を聴くことである。そして、他者の意見を聴くには、積極的に出向く耳・継続する耳が肝要である。これらのことは、一議員だけでなく議会全体にも当てはまる。
結び
本稿では、政策(教育委員会〈学校〉・環境・廃棄物・上水道等)への議会の役割と、議会の責任・権限を確認してきた。議会が自らの役割を認識し、責任・権限を果たすには、議員の「やる気」と「能力」が求められる。議員一人ひとりの力(議員力)は「やる気×能力」で、議会力は「議員力(=やる気×能力)×チームワーク」で表されるのかもしれない。このチームには、議員だけでなく事務局職員も含まれる。そして、これら議員力・議会力を発揮するためには、市民と同じ目線を持つ鳥瞰(ちょうかん)・虫瞰・魚瞰が必要となる。
議会には、市民・行政との間の「情報の非対称性」を極力なくし、「情報の開放性」や「エビデンス能力」を高め、事前予知能力を市民・行政とともに共有することが求められる。公正な議会は、適正な行政・経済を誘導しえる。全力で地域を考える議会・議員に期待したい。そのためには、「危機感の欠如」を避けなければならない。また、判断に迷ったときは、原点に戻ることも重要である。「私は○○○○のために議員になる(なった)」という原点を忘れてはならない。
■参考文献
◇礒崎初仁(2020a)「環境政策とリサイクル」礒崎初仁=金井利之=伊藤正次『ホーンブック地方自治〈新版〉』北樹出版
◇礒崎初仁(2020b)「子育て支援と教育」礒崎初仁=金井利之=伊藤正次『ホーンブック地方自治〈新版〉』北樹出版
◇江口潜(2019)「NIMBY問題はなぜ解決が困難なのか?─その構造に関する一理論的考察─」地域学研究vol.49-1、95〜111頁
◇環境省ホームページ「地域循環共生圏の概要」(https://www.env.go.jp/seisaku/list/kyoseiken/index.html〔2022年9月24日確認〕)
◇厚生労働省ホームページ「社会保障を支える人材を取り巻く状況」『令和4年版 厚生労働白書』(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21/dl/1-01.pdf〔2022年9月16日確認〕)
◇総務省ホームページ・第32次地方制度調査会第27回専門小委員会資料「広域連携の現状と課題について:事務の共同処理制度の比較③」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000658214.pdf〔2022年9月5日確認〕)
◇曽我謙悟(2014)『行政学〈補訂〉』有斐閣
◇田中富雄(2021)「講座 自治体議員のための政策型思考! 第9回 「社会変容」「環境変容」「担い手変容」「政策変容」と議会」議員NAVI 2021年6月10日号2頁
◇藤井誠一郎(2021)『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』朝日新聞出版
◇山谷清志(2021)「地方行改の『効率化』問題」山谷清志=藤井誠一郎『地域を支える エッセンシャル・ワーク』ぎょうせい