2022.10.27 政策研究
第31回 多数性(その5):自治体間連絡協議会
施策・施設型
自治体が、地理的環境などに影響されて、施策・施設として何かを展開すると、そのような政策選択をした自治体間で共通の課題に直面することになる。
例えば、「全国浄化槽推進市町村協議会」(いわゆる「全浄協」)は、浄化槽行政を担う市町村等からなる、全国団体としては、日本唯一の団体という。浄化槽行政の円滑な運営を支援する、浄化槽の普及を促進する、浄化槽の設置・維持管理の適正化を図る、などによって、生活環境の保全及び公衆衛生の向上に寄与することを目的としているという(12)。設立は1990年11月29日であり、加入団体数は1,355団体(2022年6月現在)である。各都道府県協議会を支部会員とする全国組織であり、会長は北本市長(埼玉県合併処理浄化槽普及促進協議会会長)である(2022年10月現在)。都道府県単位に支部があり、さらに、相当数の市区町村を網羅しており、組織形態から見れば、市町村間から共通課題をもとに任意に積み上げて形成されたというより、上から全国的にあまねく網羅するようにつくられた系統組織と位置付けることができよう。
主な活動は、次の三本柱から成り立っているという。①登録審査:循環型社会形成推進交付金及び汚水処理施設整備交付金の対象となる浄化槽が厚生労働省が定める国庫補助指針に適合しているか否かを審査し、会員市町村等に通知する。②市町村職員研修会:浄化槽行政を担当する市町村職員等を対象に浄化槽の基礎知識の習得を目的に各都道府県別に毎年開催する。③国等への要望:浄化槽の整備等を適切に進めるため、会員の意向に基づき国等への要望行動を実施する。
また、「全国自治体病院協議会」は、自治体病院事業の発展とその使命の完遂により、地域保健医療の確保と質の向上を図り、もって地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする団体である(13)。沿革的には県立病院間の連絡協議会である。1952年6月に、北日本県立病院組織結成準備会が発足し、翌1953年2月に北日本県立病院協議会が設立された。同年4月には東日本でも設立され、7月に全国都道府県立病院協議会となった。1962年4月には「全国自治体病院協議会」となった。1970年には、全国知事会などとともに自治医科大学設立運動も行っている(1972年設立)。
なお、2005年には、第1回日本病院団体協議会(いわゆる「日病協」)へ参加するようになった(14)。この点で、自治体間連絡協議会というよりは、医療機関としての公立病院の業界団体に近づいているともいえよう。
「全国市町村再開発連絡協議会」は、市街地再開発事業などのあり方を探ろうと、2001年11月16日に全国の54市町が参加して兵庫県川西市で設立総会が開かれた。市街地再開発事業などに関わる全国の市町村で構成し、同事業による課題などの把握と問題点の解明、及びすでに完成している再開発ビルの再生に向けた研究・政策提言などを行い、都市再生の円滑な推進に資することを目的として設立された。加入市町には、川西市のほかに、岐阜県多治見市・美濃加茂市、大阪府豊中市・高槻市・泉佐野市・河内長野市・高石市・枚方市、兵庫県明石市・三田市・芦屋市、奈良県田原本町などがある。事務局は川西市役所に置かれている。ほかに、独立行政法人都市再生機構も加入している。また、同協議会では講師を招請して「再開発塾」を開催している(15)。
これに対して、「公益社団法人全国市街地再開発協会」というものもある(16)。この協会は、「市街地の再開発、住宅地区の環境整備、密集市街地の整備、マンションの建替えの円滑化、中心市街地等における居住機能の増進等に関する総合的な調査研究及び事業の推進を図ることにより、公共の福祉の増進に寄与すること」を目的としている。
事業には、①市街地の再開発等に関する情報提供及び普及啓発(書籍・定期刊行物の発刊、研修会・セミナー・視察会等の開催、功労者等表彰、再開発マップ、すまい・まちづくり活動協力支援等(マンション再生協議会等))、②市街地の再開発等に関する相談・助言(調査受託(各種助言・情報提供、受託調査など)、相談業務の実施(再開発相談箱)、特定業務代行者の選定支援)、③市街地の再開発等に関する調査研究(コンサルタント検索〈URRIS〉(調査業務等データベース検索)、再開発事業完了地区収録全集の刊行(「日本の都市再開発」)、広報誌「CITY in CITY」、自主調査研究)、④市街地の再開発等の促進のための債務保証(債務保証制度)がある。
沿革からは、国の法制・施策と密接な関係があることがうかがえる。1969年に都市再開発法の制定とともに、社団法人全国市街地再開発協会が設立された。1979年には、組合再開発促進基金(初動期支援)が創設され、2000年にも組合再開発促進基金の拡充(建設資金支援)がなされている。2002年に都市再生特別措置法が制定されると、組合再開発促進基金を民間再開発促進基金に改称した。2012年には公益社団法人へ移行している。
正会員は、40都道府県、115市町村のほかに、再開発組合等3、機構公社等20、施設管理団体3、個人11など192である。機構公社等には、(独)都市再生機構、首都高速道路(株)、(一社)全国住宅供給公社等連合会、東京都住宅供給公社、横浜市住宅供給公社、大阪府住宅供給公社、(一財)首都圏不燃建築公社、(一財)住宅改良開発公社、(公財)東京都都市づくり公社、(一財)中央区都市整備公社、(公財)都市計画協会、(公財)大阪府都市整備推進センター、(一社)再開発コーディネーター協会、(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター、(公財)名古屋まちづくり公社、(一社)日本建設業連合会、(一社)日本住宅協会、(一社)日本ビルヂング協会連合会、(一社)不動産協会、特定非営利活動法人福岡県市街地再開発協会がある。個人には、大村謙二郎(筑波大学名誉教授)、小林重敬(横浜国立大学名誉教授)、日端康雄(慶應義塾大学名誉教授)などがいる。
特別賛助会員は、(独)住宅金融支援機構、(株)日本政策投資銀行である。賛助会員は215である。簡単にいえば、ゼネコン(建設事業者)、コンサル・設計業者、デベロッパー・不動産業者、総合商社、鉄道会社、税理士法人など、営利事業者である。このように見ると、国の政策と密接に絡んだ「産官学地」(産業界・官界・学界・地方自治業界)の利益共同体であり、自治体間連絡協議会の射程を超えている。