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2022.10.27 政策研究

第31回 多数性(その5):自治体間連絡協議会

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国策型

 国の施策への陳情・圧力の色彩がより強いものに、例えば、「一般社団法人全国過疎地域連盟」がある(5)。事業内容からもそれは明らかである。事業内容は、①過疎地域の持続的発展のための施策の推進及び予算の確保のための運動(定期の大会・理事会等の開催、政府・国会に対する実行運動の展開)、②調査研究及び資料の収集整備(過疎地域の持続的発展のための諸問題について調査研究並びに資料の収集整備)、③機関誌の発刊(会員、図書館、学術研究機関等への過疎情報誌の配布)、④電子メールによる情報提供(会員及び支部等へ発信)、⑤情報の交換(総務省等関係省庁・関係国会議員等との意見・情報交換等の実施)、⑥その他必要な事業(過疎対策担当職員研修会の開催、過疎地域持続的発展優良事例表彰(連盟会長賞)の実施、過疎問題シンポジウムの開催)である。このうち、①や⑤などは、完全に国への圧力団体として意識されていよう。
 沿革的にも、国の累次の過疎対策法と密接な関わりを持っている。一般社団法人全国過疎地域連盟は、もともとは1970年5月に設立されたものであるが、過疎対策法の制定に伴い、法の趣旨に沿って名称が変更されている。すなわち、1970年には全国過疎地域対策促進連盟(過疎地域対策緊急措置法)、1980年には全国過疎地域振興連盟(過疎地域振興特別措置法)、1990年には全国過疎地域活性化連盟(過疎地域活性化特別措置法)、2000年には全国過疎地域自立促進連盟(過疎地域自立促進特別措置法)、2021年には全国過疎地域連盟(過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法)、という具合である。
 会員資格も過疎対策法に影響されて、過疎地域市町村、特定市町村、過疎関係都道府県などである。定款5条によれば、「(1)過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和3年法律第19号。附則を含む。)において、同法の特別措置の対象となる市町村(以下「過疎市町村等」という。)(2)関係都道府県(3)当法人の趣旨に賛同する個人及び法人」とされている。
 また、「全国原子力発電所所在市町村協議会」(いわゆる「全原協」)は、市町村に原子力発電所が立地されることによって生じる諸問題に、結束して解決し、住民の安全確保と地域発展を目指す任意団体という(6)。国策である原子力発電所の立地は、法制的には事業者と国が一方的に決定するものであり、自治体にとっては与件として課される環境要因にすぎない。設立趣意書(1968年6月5日)によれば、
 「近年の原子力科学の発達は誠に目覚しいものである。
 特に世界的エネルギー源の将来を展望して日本産業界の電力需要から、原子力発電所の建設が急ピッチで進められ、又全国各地に建設計画が決定せられつつある実情であります。
 すでに、原子力平和利用の法的規制や安全審査ならびに原子力賠償法が制定されておりますが、法のみによって規制し、あるいは企業の技術開発のみをたのみとして安じては万全を期し得ないものと思われます。
 いうまでもなく原子力施設の安全対策は国の責任において積極的施策と実施がなされるべきものであり、各市町村それぞれの立場で原子力発電所地域の開発と安全対策を図ることは到底十分に望み得ないところであります。
 従ってこの際相共通する各市町村が強く結束して全国的視野に立って調査研究を行うとともに原子力発電所地帯の幾多の問題を十分国の施策に反映させ、同施設地帯の整備開発と安全性確保の諸施策を推進することは何ものにも優る緊急事であると考えるものでありまして、このためここに関係市町村長ならびに議長が本会を組織し、政府に対し有効、適切な施策を強く要請するために設立するものであります。」
とある。
 会員は、原子力発電所所在市町村を中心にして、25市町村の首長・議長である。首長と議会とが一体として参加している点は興味深い。会長は敦賀市長(事務局は敦賀市役所原子力安全対策課)、副会長は女川町長・御前崎市長・柏崎市長・美浜町長・玄海町長、理事は泊村長・志賀町長・松江市長・伊方町長、監事は東通村長・薩摩川内市長であり、所在市町村の中での相対的なプレゼンスの大小が推測される。
 なお、所在ではなく周辺市町村である石巻市、建設・計画中の大間町・六ヶ所村・むつ市・上関町、被曝被災地で廃炉が決定されている双葉町・大熊町・楢葉町・富岡町、などが含まれている。さらに、周辺市町村といえる神恵内村・共和町・岩内町の3首長が準会員である。
 また、「全国史跡整備市町村協議会」は、史跡名勝・天然記念物・重要文化的景観を所有する市町村をもって組織され、加盟市町村が協調して、史跡等の整備に関する調査研究及びその具体的方策の推進を図り、もって文化財の保存と活用に資することを目的とする協議会である。1966年1月7日に設立された(7)
 活動は、史跡保全議員連盟や文化庁との密接な連携のもとに行われている、と自称している。要するに、「政官地」(政界・官界・地方自治業界)の利益共同体の構成員を意味しているが、利益共同体の構成員を網羅する組織ではなく、利益共同体の一角である「地」(自治体)の組織である。そして、全国史跡整備市町村協議会関係予算(「史跡等公有化助成」、「史跡等整備活用事業」、「埋蔵文化財発掘調査等」の3本柱)の確保に向けた陳情活動等を積極的に行っている。加盟市町村数は、2022年8月現在で、623市町村(市433・町173・村17)である。設立時は39市町村であり、最大は2003年度の696市町村であった。

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