2022.10.25 政策研究
第9回 地域新電力会社はカーボンニュートラル達成の近道か?(2)
ところざわ未来電力の調達電力の75%がJEPX(日本卸電力取引所)高騰の影響を受ける
藤本所沢市長は、「今は市場の電力が高くなって」と国会で発言したと先ほど述べた。 ところざわ未来電力の場合、電力市場価格の高騰に影響を受けるのは、まず「その他」の11%分である。この「その他」分はJEPX(一般社団法人日本卸電力取引所)という電力市場から購入しなくてはいけない。
JEPXは、我が国で唯一の卸電力取引市場を開設・運営する取引所であり、足りない電力はここから買わなくてはいけない。では、なぜ電力が足りなくなるのか。 地域新電力は、需要に応じて「同時同量」の電気を契約者に対して供給する義務がある。ところざわ未来電力の場合、太陽光発電とは違い、夜も発電可能な廃棄物バイオマス発電の割合が高いため、JEPXからの購入割合も理論的には低い。ただ、昼間であっても当然需要に対して供給が追いつかない場合も出てくる。電力需給が逼迫(ひっぱく)したからといって、ごみ焼却場は発電目的ではなく、基本は廃棄物処理であり、いきなりごみ焼却量を増やすことはできないからだ(余談であるが、その点、木材バイオマス発電は、コントロールがしやすい)。そして、足りなくなりそうな場合は、JEPXから購入する(正確にいうと、事後的に足りない分は、インバランス料金として市場価格の3倍徴収される)。
このJEPXの価格が近年、高騰している。最も値上がったのは、前日スポット市場システムプライスで2021年1月、60円/kWhを超えた。それまでは、ほぼ10~20円/kWhで推移していた。その後、いったんは価格が安定したが、2021年10月から再び急上昇、30円/kWh前後となり、2021年度は過去最多の14件の新電力会社が倒産した。
出典:自然エネルギー財団ホームページ(https://www.renewable-ei.org/statistics/electricitymarket/)
図3 JEPX前日スポット市場システムプライス(円/kWh)
さて、JEPXの価格高騰の影響を受けるのは、ところざわ未来電力の場合、「その他」11%にとどまらない。廃棄物バイオマス発電(FIT電気)56%、太陽光(FIT電気)8%も価格高騰の影響を受ける。FIT制度とは、固定価格買取制度のことで、ここでは詳細には触れないが、太陽光や風力など、発電時にCO2排出を伴わない再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社(小売電気事業者)が一定期間固定価格で買い取ることを国が約束する制度である。再生可能エネルギーの普及を目的としていることから、市場価格より高い価格設定がなされている。市場価格との差額分は、再生可能エネルギー発電促進賦課金として、電気利用者から徴収されている。2021年度の見込みでは総額2.7兆円と、その金額の大きさに批判も多い。FIT電気について特定の施設から、所沢市でいえば、例えば市内にあるメガソーラー施設などから電力の地産地消を目指して電力を調達する場合、再エネ電気特定卸供給契約を結んで購入することになる。ただし、FIT電気には電力利用者からの賦課金が含まれていることから、先ほどのJEPXの価格に連動した価格で買い取ることを求められている。
まとめると、ところざわ未来電力は調達電力の約75%が、JEPXの価格高騰の影響を受けることになる。そのため、先ほどの藤本市長の国会での発言がなされたといえよう。