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2022.10.25 政策研究

第9回 地域新電力会社はカーボンニュートラル達成の近道か?(2)

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所沢市における地域新電力の電源は、ほぼ半分が市外のごみ処理発電由来

 この発言の背景を探るために、所沢市出資の地域新電力「ところざわ未来電力」の現状の電力調達と供給サービス内容を確認する。  図1を見ても明らかなように、前回紹介した「みやまスマートエネルギーの仕組み」と類似した、いわゆる一般的な地方公共団体主導型の地域新電力である。みやまスマートエネルギーとの最大の違いは、JFEグループの「アーバンエナジー株式会社」が加わっている点である。出資者は、所沢市(51%)、JFEエンジニアリング株式会社(29%)、飯能信用金庫(10%)、所沢商工会議所(10%)となっており、所沢市が過半を占めている。
 調達した再生可能エネルギーを、公共施設を中心に民間事業者(高圧)や家庭・事業者(低圧)に販売し、その調達と供給を賄うのが「ところざわ未来電力」である。ちなみに電力料金は、「トコろんプラン」と「再エネプラン」がある。前者は、東京電力エナジーパートナー標準プランの3%割引で、「太陽光やバイオマス発電など再生可能エネルギー由来の電力が約50%を占める経済的で環境にも配慮したプラン」(ところざわ未来電力ウェブサイトより)だ。
 「再エネプラン」は、「再生可能エネルギー由来100%の電力。調整後CO2排出係数ゼロの電力プラン」だ。年間電気料金は、モデル試算で、東京電力エナジーパートナー標準プランの「96,362円」に対して、再エネプランは「99,241円」と割高な料金設定になっている(2022年10月20日現在)。ちなみに「トコろん」とは、所沢市のゆるキャラである。

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出典:株式会社ところざわ未来電力ホームページ(https://tokorozawa-mirai.co.jp/business/#suplliers

図1 ところざわ未来電力「電力供給の仕組み」


 続いて調達電源構成(図2)である。再生可能エネルギーの割合は約9割と高い。また、全体の56%を占める廃棄物バイオマス発電のほとんどが、県内他市町の廃棄物バイオマス発電であることから、所沢市内調達の再生可能エネルギー比率は、約3~4割と見積もってよいだろう。ちなみに、この県内他市町の廃棄物バイオマス発電施設の建設を請け負ったのが、「ところざわ未来電力」の出資者でもあり、電力取次契約対象者である、アーバンエナジー社関連企業のJFEエンジニアリング社である。エネルギーの地産地消の範囲をどこまで広げるかの議論はあるが、従前より紹介している地球温暖化対策実行計画(区域施策編)では、排出係数の低い電気を区域内で利用することで、二酸化炭素排出量も低減する。よって特に地域新電力が地域内にあるからといっても、地域新電力の排出係数がそれほど低くなければ、むしろ地域外の排出係数の低い電力会社から購入する方が、区域から排出される電力利用由来の二酸化炭素排出量は減少する。
 ところざわ未来電力が比較対象として挙げている東京電力エナジーパートナーのメニューにも、水力発電由来の「アクアエナジー100」があり、これだと排出係数は0である。ところざわ未来電力にも排出係数0の「再エネプラン」があるが、これは環境価値としての非化石証書を、「再エネ指定」なし、つまり原子力発電から得られる非化石証書を利用している。その点では、「アクアエナジー100」の方が、水力発電の割合が100%であることから、原子力発電を好ましい思っていない方には、こちらの方が少し割高(先ほどと同様のモデル試算:10万5,769円)だが、望ましい選択と思われる。

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出典:株式会社ところざわ未来電力ホームページ(https://tokorozawa-mirai.co.jp/business/#suplliers

図2 ところざわ未来電力の電源構成

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