2022.10.25 議会改革
第32回 自治体議会を支える─議会事務局のあり方探見─
4 議員と事務局職員
議会事務局やその職員にとって、議員との関係や距離をどのようにしていくべきか、ということは、なかなか正解が見つからない永遠の課題ともいうべきテーマだろう。
少なくとも、制度上は、事務局職員は事務局長等を介して議長の指揮命令権に服するのであり、個々の議員との間には指揮命令関係はなく、何らかの特別な関係が規定されているわけではない。
もちろん、事務局は、議会運営の事務に従事し、議会の活動を補佐することにより、議員をサポートすることになる。議会の運営や活動に必要な範囲で、議員を補佐し、その要求に応えることはその職務といえる。しかし、事務局職員は、議員に従属するわけではなく、その指示や要求にすべて従うべき義務はないともいえる。議員の中には、事務局職員を議員のお世話役とみなす向きもあるようだが、事務局やその職員は、議員の世話をすることを職務としているわけではない。その点では、議員だけでなく職員の両者の意識改革がまずは必要となるところもあるのではないだろうか。
また、事務局職員の中には、表面的に議員の言うことを聞いていればよいといった姿勢の人も存在するという。ただ、そのような投げやり・事なかれ主義な態度では、それが無責任な対応にもつながったり、議員がトラブルや問題を起こした場合に、その議員だけでなく、事務局や職員の対応も批判されたりすることにもなりかねない。事務局やその職員として、「できること」と「できないこと」を議員にしっかり伝えることが重要であり、場合によっては議員として「しなければならいこと」と「してはならないこと」を諫言(かんげん)することも必要だろう。
他方で、議員の側からは、事務局職員が、それは事務局の仕事ではないとか、政治的なことには関わらないなどとして、必要最小限のことしか行わず、十分な補佐をしてもらえないといった不満の声も聞こえてくる。守りの姿勢に徹する事務局や職員がいることも確かだろうが、議員自身で行うべきことも多いはずであり、時間がないとか面倒だとかうまくできないといったことで安易に事務局職員に頼むというのも問題である。ましてや、人員的に余裕のある事務局とそうでない事務局とでは議員サービスの範囲が異なるのは、やむをえないところがある(7)。
いずれにしても、いろいろと世話になったとか、多数派や与党会派の議員、有力議員だとか人情や打算などが働くことが全面的に否定されるわけではないとしても、大事なことは、議会スタッフとして、できる限りそれぞれの議員に同じように平等・公平に、かつ、政治的に中立の立場で接するように心がけ、対応するようにすることだろう。事務局や職員が円滑に業務を行うには、議員との間での信頼関係の構築が重要となることはいうまでもないが、その一方で、一定の距離を保つことも必要であり、特に、職務以外の面でのけじめといったものも求められる。惰性に流されることなく、議員との関係を相対視・客観視する機会を適宜設け、対応が過剰となったり過少となったりしていないかを点検することも必要なのではないだろうか。
実際に、議員に対しどの程度の距離感をもって接するべきかについては、一概にはいえないところがある。それをすべて個々の職員の判断に委ねるというのではなく、事務局として、ある程度意思の統一を図り、相場観をもっておくことも必要である。さらに、それを議員の側にも理解してもらうような取組みも必要であり、議員と事務局の間における意思疎通とその共有化を図っていくことも大事となる。
望ましいのは、事務局職員が議会スタッフとして住民の代表である議員を支え、議員の側も、職員を専門スタッフとしてこれに接し、議会のためにその能力を発揮してもらうようにしていくことだろう。議員による職員に対するハラスメントなどが問題となっているが、議員と職員という関係を背景とした職員の人格を尊重しないような言動はもってのほかである。もしも、そのような事実があるときには、議会事務局が組織として毅然(きぜん)と抗議をし、その改善などを求めるべきだろう。