2022.10.25 議会改革
第32回 自治体議会を支える─議会事務局のあり方探見─
これに対し、1946年の第一次地方制度改革では、書記は再び議長が任免することとされた。政府原案では、議会の自主性・独立性や定例会制度による議会活動の恒常化を考慮しての議長が任命する書記を議会がもつことの必要性と、吏僚組織の統一性や理事機関と議会との緊密な連絡調整の確保の観点などから、書記は吏員の中から市町村長・府県知事の同意を得て議長が定めるとされていたところ、GHQの側から、議会の独立性の強化の観点から長の同意は不要との修正意見の申入れがあり、衆議院の審議の段階で修正されたものであった(3)。そして、1947年の地方自治法では、書記の陣容を整えるため新たに書記長の制度が導入され、都道府県議会は必置、市町村議会は任意設置とされた。
他方、議会の事務局については、法律上は明記されていないものの実際上設けることは可能との取扱いであったが、1950年の地方自治法改正で、都道府県議会に事務局を置くことが明記され、市議会も条例により事務局を置くことができる旨が規定されることとなった。この改正は、政府原案にはなく、全国都道府県議会議長会等からの要望なども背景に衆議院で修正追加されたものであり、これに対し、政府の側は、機構の膨張や人員の増大を来すおそれなどからもう少し待った方がいいとして消極的な態度であったといわれる(4)。そして、1958年の地方自治法改正では、町村議会についても、条例により事務局を設置できることとされるに至っている。
このほか、事務局の補佐機能や専門性の充実が議論となる中、2006年の地方自治法の改正により、その所管について「庶務」から「事務」に改正されている。
議会事務局の役割は、本会議・委員会の議事、請願・陳情の受付、会議録の作成等などの「議事の運営」と、議長等の秘書、議員報酬・政務活動費、経理、議会広報などの「庶務の処理」がその主なものとされるが、近年は、そのほかに、審議・議員提案のための情報収集、法令の調査研究、議案の立案などの「政務調査等」が挙げられることが多い(5)。議会図書館の運営も事務局の役割である。
このようなことから、議会事務局の組織として、比較的規模の大きいところでは、議事課、総務課、調査課等の課が置かれることが多いといわれる。その一方で、小規模な議会の中には、議会事務局の職員が監査委員事務局や選挙管理委員会事務局の職員と兼務しているようなことも少なくないという。そして、職員の数が少ない事務局においては、議事運営を支えることなどで手一杯というのが実情のようだ。
なお、議会事務局については、自治体間での共同設置の対象となっており、小規模自治体の議会の機能強化や事務局の体制強化策としてその共同設置などもいわれているものの、いまだ共同設置した例はないようである。関係者の間では、議事運営の面で共同設置は、議会それぞれのやり方などもあり、困難といったことも語られているようだが、それぞれのやり方がどれだけ合理的で維持すべきものなのかということもあり、独自性へのこだわりは理解できるとしても、はなから難しいとしてしまうことには疑問もある。議員が気軽に相談したり頼んだりできなくなるとか、議員との関係が変わるといったこともあるかもしれないが、それは変えていくべきところや、割り切り次第ともいえ、会期や会議の開会が重なりうることの問題も工夫次第で対応可能なようにも思われる。仮に実際には、議事運営の補佐の共同化についてはなかなかハードルが高いとしても、政務調査等の面での人材や体制の共有化などの検討の余地はあるのではないだろうか。
いずれにしても、これまでの延長線で考えるのではなく、発想の転換も必要なように思われる。