2022.10.25 議会改革
第32回 自治体議会を支える─議会事務局のあり方探見─
7 事務局体制の強化
以上のとおり議会事務局の役割やそれに対する期待は大きくなってきているが、現実にはなかなかそれに追いついていないのが実情ともいわれる。
事務局体制の強化ということでは、職員の増員拡充ということが真っ先に挙げられる。しかしながら、行政改革などによって自治体職員の定数が削減されている状況の下で、容易ではないのが現状であり、そのことを一番分かっているのは現場だろう。
全国市議会議長会「市議会議員の属性に関する調(令和3年7月集計)」によれば、815団体の議会事務局の平均職員数は8.0人、人口5万未満が4.5人、5万~10万未満が5.9人、10万~20万未満が8.6人、20万~30万未満が13.1人、30万~40万未満が16.4人、40万~50万未満が18.0人、50万以上が20.0人、指定都市が34.2人となっており、2013年8月集計のデータと比較してみると、人口規模が30万以上では定数が若干増えているものの、それ以外ではほとんど変わっていない。
また、67回町村議会実態調査によれば、2021年7月1日現在、議会事務局職員の条例定数の平均は2.6人、事務局未設置を含む1議会当たりの職員数の平均は2.5人であり、議会を担当する職員の現在数2,342人のうち、専任は720人(30.7%)、兼任は1,622人(69.3%)となっている。2011年7月1日現在のデータと比較してみると、定数・職員数の平均ともほとんど変わっておらず、逆に、当時は80.7%であった専任が大幅に減少している。
他方、都道府県議会については、全国都道府県議会議長会「第14回都道府県議会提要」によれば、2019年7月1日現在、議会事務局職員の定数は平均で43.3人、最も多いのが東京都の148人、少ないのが鳥取県の23人となっている。2015年7月1日現在の平均定数が40.3人であり、若干増えていることがうかがえる。そのほかに、執行部局職員を議会事務局職員と併任させているところも少なくなく、例えば、長野県では事務局職員の定数が38人であるのに対し、併任職員の数が74人となっている。
定員管理が厳しくなっている中、議会事務局の職員の増員は、執行部局の職員の減員をもたらす可能性が高く、執行部の側として、執行部局職員を減らしてまで、議会事務局職員の増員・強化を積極的に行うようなことは考えにくく、議会対策ということでは、議会の運営・審議が滞りなく進行するために必要な人員の配置で足りると考えるのが通常だろう。そのような中で、外野から、議会事務局の強化策として、職員の増員や政策法務経験のある職員の配置、専門人材の独自採用などを提起しても、絵空事となるだけである。
事務局体制の強化として、執行部局職員の活用といったこともいわれ、上記のように、執行部局職員を複数併任させているところもある。執行部局職員の知識・能力を活用できる意味は大きく、一つの現実的な選択肢とはなるものの、権力分立や議会の自立性との関係を考慮する必要があるほか、たとえ併任としても所属する執行部局の立場優先となる可能性は否定できず、どのような役割をどこまで担わせるのかが問題ともなりうる。このほか、若手の研究者や弁護士の任期付きや非常勤の職員としての採用、有識者や法律家の専門委員等への委嘱なども議論として提起されているが、議会や立法の研究者は少なく、実務を担うには一定の経験なども必要となることなどもあって、人材の確保はなかなか容易ではないように思われる。全国又はブロック単位での議会を支援する機構やシステムの整備、大学との連携による条例制定等の支援の受入れなども提案されているが、実際のニーズや費用・人材などの問題をどうクリアできるかということになってくるだろう。公立や大学等の図書館との連携、議員への情報提供機能・レファレンスサービス機能の充実など議会図書室の拡充も課題となっているが、議会図書室の現状を見る限り(8)、その道のりも平たんではなさそうだ。