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2022.09.26 政策研究

第30回 多数性(その4):類似団体

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類似団体の使い方と「平均」の魔力

 このように市町村を類型化すれば、類似団体の中での職員数(正確にいえば、人口1万人当たりの職員数(2))の多寡が分かる。しかし、その多寡が示され、ある団体が類似団体の中で、平均よりかなり多い(少ない)、あるいは平均水準である、などということが示されても、それが、直ちに多すぎる(少なすぎる)、あるいは適切である、などという結論には至らない。実際に職員定員・配置を決定するときには、人口規模・産業構造以外にも、様々な条件が考慮され、その必要性に応じて決定されるからである。例えば、総務省自身も、地勢条件、団体の財政状況等の社会経済条件、地域住民の行政に対する要望や団体の施策の選択等の様々な要因を指摘している。
 したがって、総務省自身も「留意事項」として、「算出結果は、『あるべき水準』を示すものではなく、例えば、『なぜ自分の団体は他の類似団体と比べ、この部門の職員数が多いのか』といった、各団体が自ら考える“あるべき水準”を検討するうえでの“気づき”のための指標として活用することを目的としてい」るとしている。“あるべき水準”は各自治体が自己決定するものであり、他者の平均として外から決定するものではない、という理念である。
 とはいえ、統計の魔力は、「平均」を、あたかも「正常」、「普通」、「標準」として「妥当」に位置付け、「平均」からの「逸脱」を「異常」、「特別」、「例外」、「標準外」として「不当」に位置付けることにある。いわば、「妥当」の基準についての根拠や正当化をしなくても、「平均」を明らかにすれば「正常」も明らかになる、という計算の魔力である。あるいは、「平均」はデフォルトとして機能し、「平均」から乖離(かいり)した自治体に強く理由説明を求めるが、「平均」に近い自治体は理由を問われない。いわゆる「横並び」の同調圧力であり、「出る杭は打たれる」=「出なければ杭は打たれない」=「雉(きじ)も鳴かずば撃たれまい」という自治体為政者の処世術につながる。「平均」への圧力は、国にとっても、住民にとっても、自治体当局者にとっても、自治体労働者にとっても、メディアにとっても、コンサルタントにとっても、研究者にとっても、同じように作用する。
 定員管理でいえば、国が明確な根拠をもって適正定員を決定しなくても、あるいは、各自治体の住民が自ら適正定員を算出しなくても、多数の類似した自治体の実際の職員実数から「正常」が導かれ、「異常」な団体をあぶり出すことができる。国が政策介入したり、住民が要望をしたり圧力をかける(3)場合は、「平均」から逸脱した「異常」な団体のみを標的にすればよい。そして、統計的にいえば、「異常」な団体は常に少数であり、「正常」な団体という多数派から見れば、「対岸の火事」と「高みの見物」で終わるからである。

類似団体と財政分析

 類似団体などを用いた比較が長く行われてきたのが、財政分析である(4)。財政分析で開発された類似団体が、職員数比較にも転用されてきた、という方が正確である。類似団体は、政令指定都市1類型、特別区1類型、中核市1類型、施行時特例市1類型、一般市16類型、町村15類型である。なお、都道府県に関しては、財政力指数に基づき、全国の都道府県を5グループ及び東京都に分類している。
 類似団体による財政分析の基本は、類似団体内部での相互比較であり、類似団体のグループ間の比較ではない。もっといえば、類似団体間の差異は、行政権能・人口規模・産業構造によって規定されているので、その影響が出ているものと前提されているわけである。もちろん、この前提を取り払って、類似団体間の差異を重視したり、あるいは、類似団体であるか否かを問わずに比較することもありうる。
 類似団体を利用した財政分析は、「類似団体別財政指数表」として、とりまとめられている(5)。類似団体ごとに、最新の決算結果に基づく財政指数が示されている。情報量は膨大であるが、例えば、歳入項目、歳出項目(性質別・目的別)の合計、人口1人当たり額、経常収支比率、積立金現在高、地方債現在高(人口1人当たり額、一般財源に占める割合)、普通建設事業費(補助・単独等の決算内訳の人口1人当たり額)である。

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