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2022.09.12 政策研究

第9回 政策(福祉・保健・医療・保険)と「分配」

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「医療は地域・人によって変わる」、「求められる本当の心を知り、寄り添うこと」

 医療環境も地域によって変わる。けが等で救急医療が必要な場合、離島に住む人には治療の機会を天候に委ねざるを得ないという宿命がある。荒天では、ヘリコプターも船舶も動きがとれず患者を搬送できないからである。通常の医療であれば、余裕期間を確保し対応することができる。その意味では、医療でも時間的余裕が必要となる。
 また、ドナー登録がなければ、救えない患者もいる。他方では、ドナーになりたくとも、なれない人もいる。人によって医療は変わるのである。さらに、医療は家族・親戚・知人にも影響を与える。場合によっては、家族が納得する形をつくることも求められる。そのため、医療は患者本人や家族等の本当の心を知り、寄り添うことが大切である。寄り添えなかった場合には訴訟になることもある。

国民健康保険・後期高齢者医療保険・介護保険は「皆(かい)保険」

 我が国は、国民皆保険制度を通じて世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現している。また、今後とも現行の社会保険方式による国民皆保険を堅持し、国民の安心・安全な暮らしを保障していくことが求められている。
 なお、日本の国民皆保険制度の特徴は、「国民全員を公的医療保険で保障」、「医療機関を自由に選べる(フリーアクセス)」、「安い医療費で高度な医療」、「社会保険方式を基本としつつ、皆保険を維持するため、公費を投入」であるとされる(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000377686.pdf〔2022年7月4日確認〕)。

政策問題の複雑性、資本主義のマイナス面を再分配でフォローするポリシー・ミックス

 ところで、政策には、秋吉貴雄が述べるように複雑性を構成する「全体性」、「相反性」、「主観性」、「動態性」という四つの特性がある。全体性とは、個別の政策問題は他の政策問題と相互に関連しているため、それらの問題との関連性を踏まえた上で、大きな一つのシステムとして検討しなければならないということである(例:雇用政策を講じても保育所整備等の子育て政策がないと効果が出ない)。相反性とは、一つの政策問題の改善が他の問題の悪化につながる可能性が高いということである(例:重工業が発展すると環境が悪化する)。主観性とは、問題に関わる個々のアクターのそれぞれにおいて問題と認識されるものが異なるということである(例:人により貧困の原因と考えるものは様々である〈個人の能力・経済の不況・国の政策〉)。動態性とは、政策問題の構造は、常に決まっているのではなく、時間とともにその構造や要因も変化していくということである(例:時代で変わった観光業支援政策〈団体客対応のバス道路整備から小人数対応のコンテンツ作成〉)(秋吉 2015:28-30)。
 そのため、全ての人に常に有効で万能な政策はない。福祉・保健・医療・保険分野における政策でも同様である。したがって、資本主義のマイナス面を再分配でフォローするというポリシー・ミックスが必要となる。再分配においては、個人や地域のニーズに応じて分配する方が一律に分配するよりも公平な場合もあるが、どこまでそこに考慮して分配できるのかという実施上の問題もある。
 なお、日本の租税負担率は、外国と比較して低い段階にある。

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