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2022.08.25 政策研究

第29回 多数性(その3):自治体の業界団体

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地方六団体の利害の一致と相違

 地方六団体が六つに分かれているのは、首長と議会、都道府県と市と町村で、それぞれ利害が異なると考えられているからである。こうした利害の相違は、主に自治制度によってつくられたものである。憲法・地方自治法などでは、「地方公共団体」として一括されている自治体ではある。しかし、機関としては、自治制度によって、首長と議会の権限配分は異なっている。また、都道府県と市町村の事務配分や権限・関与関係も異なっている。さらに、町村に比べて市は、人口規模が大きいことが一般的な制度の想定であり、それに従って事務配分・権限が異なっている。もっとも、町と村も制度的に異なっているといえるし、都と道と府県も異なっているといえよう。しかし、こうした差異は軽微なものとして無視されて、六つに組織化されているわけである。
 戦前においては、市と町村の制度的な差異はより大きかったので、戦後における分化の連続性もある程度は理解できよう。そもそも、全国町村会は1921年に結成された(6)。全国市長会は、その前身に当たる組織は古いが、この名称になったのは1930年である(7)。ちなみに、全国市議会議長会の設立は1932年である(8)。こうした沿革から、市と町村の全国業界団体は分化したままなのであろう。さらにいえば、現在でも、全国町村会は、町村長=首長側団体なのであるが、「全国町村長会」とは名乗っていない。これは、戦前の町村制においては、個々の町村長は個々の町村会から選出されるので、個別の町村において町村長と町村会の一体性が強かったことの名残であろう。
 地方六団体は、自治制度の分化によって組織化されているので、それぞれの類型間の利害が対立する問題や、類型内の利害が対立する問題を扱うことは厄介である。つまり、地方六団体全体が共通利害を持てるのは、地方財政全体の財源確保や、国からの関与・監督の縮減や権限移管・事務移譲に関わる地方分権だけである。しかし、全体として確保した財源を、都道府県と市町村でどのように配分するか、さらには、自治体間でどのように財政調整するか、また、同一の地方税制は地域の経済力によって与える影響が異なるので、どのような地方税制にするのか、など細部の議論では対立が生じやすい。また、都道府県と市町村の間の事務再配分や事務権限移譲、さらには、特別市制構想や道州制論議など、都道府県のあり方の根幹に関わる問題では、利害が対立しうる。

指定都市市長会と特別区協議会

 戦後における実際の制度的な差異は、市と町村との間ではなく、一般市町村と大都市制度の間にあった。つまり、一般市町村と政令指定都市と、及び、一般市町村と特別区との間の差異である。それゆえ、特殊な利害を共有する政令指定都市及び特別区は、それぞれ団体を組織することになった。
 政令指定都市の団体は「指定都市市長会」である(9)。指定都市市長会の結成(改称)は2003年であるが、その沿革は、1948年の「五大市共同事務所」に遡る。当時は特別市制条項が地方自治法にあり、特別市制実現に向けて運動をしていた。結果的に特別市制は実施されず、1956年に現行の政令指定都市制度となった。1963年に北九州市が政令指定都市に加わると、「五大市」ではなくなったので、「指定都市事務局」に改称したものである。その後も、政令指定都市の数の拡大とともに加入自治体(市長)は増えていった。なお、「指定都市市議会議長会」は存在しないが、2013年5月に全国市議会議長会の中に「全国市議会議長会指定都市協議会」が設立された(10)
 特別区の団体は「特別区協議会」である(11)。特別区協議会は、戦後の地方自治法によって特別区が一般市と同質的存在とされた時期に、すなわち、1947年5月1日に設立された。特別区長会も同日に任意団体として設立された(12)。戦後直後の特別区は市並みとはいえ、実際上は事務・財源ともに東京都に大幅に留保されていたので、特別区協議会は自治権拡充運動をする必要があったことが、一般市町村とは制度利害が異なっていた。さらに、1952年には地方自治法が改正され、特別区は都の内部団体とされ、特別区長直接公選制が廃止され、市並みという位置付けすらなくなった。それゆえに、自治権拡充運動は特別区協議会の使命となった。特別区長会事務局と特別区議会議長会事務局が設置され、特別区協議会から独立したのは、2000年の都区制度改革によって、特別区が基礎的自治体となった後の2001年である。

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