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2022.08.25 政策研究

第29回 多数性(その3):自治体の業界団体

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地方六団体

 地方六団体は、自治体全体という業界(「地方界」)利益について、一般的に増進することが役割である。もっとも、個々の自治体の利益の増大に向けた自治運営は、各個別自治体で取り組むものであり、全国的に一般的に組織化しても、個々の自治運営には直接には役に立たない。意味があるのは、地域環境や経験を共通したり、あるいは、相互に補完することで相互利益を生み出せるときに、特定の利害を共有する他の自治体と連携することである。全国の自治体をあまねく組織化した地方六団体によっては、そのような特別の利害は追求できない。
 地方六団体は、国に対して地方一般・全体の利害を代弁することが主となる。地方六団体は、国に対する自治体の利害代弁組織であり、中央に対する地方の声の表出回路である。要するに、国に対する自治体側の「団体交渉」の窓口である。
 もっとも、国と自治体の間の利害表出回路には、個別の市区町村から、それぞれの地域にある都道府県を通じて、ときには通じないで、国に陳情するものもある。また、同じ回路を通じて、国から自治体に助言指導や管理監督や統制が及ぶ。いわば、国・都道府県・市区町村は、階統制のように位置付けられ、上意下達と下意上達という利益表出・抑圧がなされる。したがって、地方六団体による利害代弁は、そうした階統制の「垂直」的な回路によるものとは別個の、「水平」的な利害代弁であろう。
 例えば、全国市長会は、都道府県の下位の団体として全国知事会の管理監督に服するものではないし、各構成市長を下位の構成員として管理監督できるわけでもない。あくまで、都道府県知事たちとは別個の、それぞれが対等な市長たちの集まりであり、その共通利害を表出する。

「全国的連合組織」の意見表明

 地方六団体は、1993年に改正されてから、地方自治法263条の3において、以下のように規定されている。
① 都道府県知事若しくは都道府県の議会の議長、市長若しくは市の議会の議長又は町村長若しくは町村の議会の議長が、その相互間の連絡を緊密にし、並びに共通の問題を協議し、及び処理するためのそれぞれの全国的連合組織を設けた場合においては、当該連合組織の代表者は、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
② 前項の連合組織で同項の規定による届出をしたものは、地方自治に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し、総務大臣を経由して内閣に対し意見を申し出、又は国会に意見書を提出することができる。
③ 内閣は、前項の意見の申出を受けたときは、これに遅滞なく回答するよう努めるものとする。
④ 前項の場合において、当該意見が地方公共団体に対し新たに事務又は負担を義務付けると認められる国の施策に関するものであるときは、内閣は、これに遅滞なく回答するものとする。
⑤ 各大臣は、その担任する事務に関し地方公共団体に対し新たに事務又は負担を義務付けると認められる施策の立案をしようとする場合には、第2項の連合組織が同項の規定により内閣に対して意見を申し出ることができるよう、当該連合組織に当該施策の内容となるべき事項を知らせるために適切な措置を講ずるものとする。
 自治体の業界団体は、総務相(省)届出による「全国的連合組織」であるが、規定上も、六つに分かれるしかない。そして、内閣への意見申出と国会への意見書提出ができる。内閣は意見申出には遅滞なく回答する努力義務があり、特に、事務・負担を義務付けるときには回答義務がある。さらに、こうした施策の立案をする各省は、意見申出が可能になるように情報提供するなど、適切に措置しなければならない。
 地方六団体は、単独で、又は共同で、様々な決議・意見・声明・要望などを表明している。そのうち、上記の1993年改正地方自治法に基づく意見表出権は重いものである。第1回目は1994年9月の「地方分権の推進に関する意見書─新時代の地方自治─」である。これは、1995年5月の「地方分権推進法」につながった。また、2006年6月には、再び意見表出権を行使して、「地方分権の推進に関する意見書─豊かな自治と新しい国のかたちを求めて─」を表出した。これは、同年12月の「地方分権改革推進法」につながった。地方六団体の意見表出権の行使に効果があったのか、国の動きや機運を受けて、意見に効果がないという「空振り」にならないと判断して意見表出権を行使したのか、影響力の判定は難しいところではあるが、少なくとも、意見表出権行使と国による分権着手立法とは一対一になっている。

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