2022.08.25 議会改革
第31回 議長という立場・役割
5 議長の選挙
議長と副議長の選挙は、議長や副議長がないとき、又は欠けたときに行われる。一般選挙後の最初の議会においては、議長及び副議長は存在しないことから、両者の選挙が必要となる。議長及び副議長の選挙は、議会の組織・構成に関するものであり、何ものにも優先して行わなければならない性質のものであり、選挙すべき事由が発生した場合には直ちに行うべきものであり、一般選挙後初の議会はもちろん、議長又は副議長が欠けたときにも、他の事件に先立って選挙が行われるべきものされている。
選挙については、議長・副議長の双方がいないとき又は欠けたときには、出席議員の中で年長の議員が臨時議長となり議長選挙が行われることになり(17)、議長選挙が終了し議長が職務を行うことができるようになったときに、臨時議長の職務は終了し、議長によって引き続き副議長の選挙が行われることになる。この点、臨時議長により議長・副議長の選挙を同時に行うのは適当ではないとの考え方が強い。議長又は副議長の一方だけが欠けたときには、欠けない方の議長又は副議長の下で選挙が行われることになる。
なお、議員中に異議がないときは、選挙について指名推薦の方法を用いることができる。この場合には、指名推薦の方法によること、指名の方法、誰を当選人とすることのいずれにも異議がなかったときにのみ当選が決定することになる。
国会においては、いろいろと紆余(うよ)曲折はあったものの、衆議院では、議長は与党第一党、副議長は野党第一党から、参議院では、議長は第一会派、副議長は第二会派から、選挙において全会一致により選出するのが近年の慣例であるが、自治体議会でもこれを参考にするところがあり、会派間の調整により指名推薦の方法を採用するところもある。このような会派を基準とした選出の慣例は、選出の際のものにとどまり、仮にその後の会派や議員の所属の変動により議長・副議長が該当会派に属さなくなった場合でも、政治的にはともかく、法的には、その地位に影響を及ぼすことはなく、交代する理由はないことになる(18)。
ところで、議長・副議長の選挙をはじめとする「議会において行う選挙」について、地方自治法118条1項は、公職選挙法46条1項・4項(投票の記載事項及び投函(とうかん))、47条(点字投票)、48条(代理投票)、68条1項(投票の無効事由)、自治体議会の議員の選挙に関する95条(当選人)の規定を準用すると規定しているが、立候補の届出等を定める86条の4の規定は準用されていない。このようなことから、自治体議会の議長選挙・副議長選挙では「立候補制」を採用することは地方自治法に抵触し、できないとの解釈がなされてきた(19)。
他方、自治の現場では、議会の透明性の確保・向上を図るために、議長・副議長の選挙において立候補の仕組みを導入する議会が増加している。もっとも、立候補の仕組みといっても、立候補する意思のある者にその旨を議会において表明させるもので、事実上の立候補制にとどまり、それらの議会では、「立候補制」といわずに「所信表明会」と呼んでいるところも少なくない。立候補制として立候補の届出を採用しているところも、所信表明会とセットであり、また、会議での選挙の対象者を限定する効果まではもたせず、立候補者以外の者への投票も排除せず、有効としているようである。