2022.08.25 議会改革
第31回 議長という立場・役割
3 議長の位置付けとイメージ
議長の立場は、基本的に、党派的観念を取り払った中立的なものでなければならず、会議においては、不偏不党、中立公正に議事を指導し、運営しなければならないとされる。
これは、日本においては、議会制の母国であるイギリスの庶民院議長のあり方が理想とされ、そのようにあるべきであるとする議論が根強いことがあり、国会の議長についても同様の見方がなされることが多い。
すなわち、イギリス庶民院では、議長は、不偏不党・中立性が要請され、議長に就任した場合の党籍の離脱、討論への不参加、表決における可否同数の場合のみの決裁などが慣行として確立している(13)。そして、これに倣い、日本の国会でも、議長の職責の遂行のためには公平かつ中立的な立場が要請されるとして、両議院とも、議長は党籍離脱(会派離脱)をすることが近年の慣例となっている(14)。
一方、自治体議会の議長についても、会派離脱が望ましいとの議論が少なくなく、そのような申合せをする議会も見られるが、そのような例は実際にはそれほど多くはないようである。自治体議会は、与野党が厳しく対立する国会とは状況が異なることや、形式的に会派を離脱するだけではどれほど意味があるのかという疑念をもつ向きも現場では少なくないことなども影響しているようだ。
自治体の議会基本条例を見ると、議長の中立・公平の立場を規定するものが少なくない。例えば、さいたま市議会基本条例では、議長及び副議長に関する規定を設け、議長は、議会を代表する中立かつ公平な立場において職務を行い、民主的な議会運営を行わなければならない旨を定め、副議長が議長の職務を行う場合にこれを準用している。芦屋市議会基本条例は、議長の役割として、議長は、議会の代表として、議会の品位を保持し、議会の機能強化に向けて先導的な役割を果たさなければならないとするとともに、中立かつ公平な立場で職務を行い、民主的で効率的な議会運営を行わなければならないことを定める。
議長・副議長の会派離脱について規定する条例もある。足利市議会基本条例は、議長の活動原則として、議長は、議会を代表し、議会の秩序保持、議事の整理及び議会事務の統理を行い、中立公正な立場で、民主的かつ効率的な議会運営を行うこと、議案の審議に用いる資料を市民に提供する等、分かりやすい議会運営を行うことを規定する一方、会派に関する規定の中で、議長及び副議長は、職務の公平性を確保するため会派を離脱しなければならない旨を定めている。
ただ、会派離脱については、一律に強制するというよりは、基本的に議長・副議長の判断・良識に委ね、慣例として行われるようにする方が妥当なのであって、これを条例や会議規則で規定することについては、議論のありうるところではないかと思われる。