2022.08.25 議会改革
第31回 議長という立場・役割
2 議長の権限
議長の権限については地方自治法が定めており、議長は、①議場の秩序を保持し、②議事を整理し、③議会の事務を統理し、④議会を代表するほか(104条)、⑤委員会に出席し発言することができることとされている(105条)。これらの権限については、議会の代表者及び事務処理を行う者としての権限と、会議全体をまとめる者としての権限に区分されることもある。
これらのうち、①の議会の秩序保持権は、議場が混乱することなく、議事が円滑に運営されるようにする権限であり、およそ議場の秩序保持の最終的な責任者は議長であり、議場の秩序維持に必要な限り、議長の判断により適時に適切な手段により秩序保持権を行使することができる。とりわけ、議会の会議中に地方自治法や会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、これを制止し、又は発言を取り消させ、その命令に従わないときは、その日の会議が終わるまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができ、議場が騒然として整理することが困難であると認めるときは、その日の会議を閉じ、又は中止することができる(地方自治法129条)。ただし、会議の開閉権は議長の権限ではあるものの、その濫用を防止するため、地方自治法は、議員による開議請求の制度を設けるとともに(114条1項)、閉議についても、議員からの開議請求により会議を開いたときや議員中に異議があるときは、会議の議決によらない限り、その日の会議を閉じ又は中止することができないものとしていることにも(114条2項)、注意が必要である(4)。
また、傍聴人が公然と可否を表明し、又は騒ぎ立てるなど会議を妨害するときは、議長は、これを制止し、その命令に従わないときは、退場させ、必要がある場合においては警察官に引き渡すことができるほか、傍聴席が騒がしいときは、議長は、すべての傍聴人を退場させることができる。他方、議場の秩序を乱し又は会議を妨害するものがあるときは、議員は、議長の注意を喚起することができる。
なお、秩序保持権の行使は、その性質上、会議の開会中で、場所は議場内に限定される。さらに、自治体議会の議長には、衆参両院の議長のような議長警察権は認められていない。
次に、②の議事整理権は、議長が開議の宣告から始まって採決、散会に至るまで順序よく議事を運ぶための権限であり、活発な議論や意思決定に向けて、一定のルールに従い議事の整理を行うものである。それに必要な議題の宣告、発言許可、発言時間の制限、採決方法などすべて議長の権限に属するものであり、それらは会議規則に基づいて行使されることになる。議案の受理、議事日程の作成、議案の委員会への付託、長等の執行部の出席要求、議案の送付、選挙の実施なども議長の権限とされる。
次に、③の議会の事務の統理権は、議会の運営を行っていく上で生ずる各種事務を統一的に処理する権限であり、事務局長又は書記を指揮監督して行われるものである。議会事務局の事務局長、書記長、書記その他の職員については、議長がその任免権を有することになる。
次に、④の議会の代表権は、対外的な関係においては機関としての議会の意思表示は常に議長の名においてなされるだけでなく、外部から議会に対する意思表示等も議長宛てになされることになるものである。
また、議長は、議会運営委員会の議決を経て、長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができ、その請求のあった日から20日以内に長が臨時会を招集しないときは、臨時会を招集することができる。議員の定数の4分の1以上の者が会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求し、20日以内に長が臨時会を招集しないときにも、議長は、当該請求をした者の申出に基づき、申出のあった日から一定期間以内に臨時会を招集する。さらに、議会又は議長の処分や裁決に係る自治体を被告とする訴訟については、議長が当該自治体を代表するものとされている。議会としての意見書の提出、調査権に基づく証人の出頭要求や公述人・参考人の出席要請なども議長名によってなされる。
次に、⑤の委員会への出席発言権は、議長が議会の事務運営全般に対して有する権限から生ずるものとされ、その発言事項について制約はないが、議決に加わることはできない(5)。