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2022.08.10 政策研究

第8回 政策(世界共通文化・地域個性文化による地域経済)と寛容

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議会報告会とクレーマー

 議会報告会にはクレーマーが来ることもある。しかし、継続して議会報告会を開催していれば、クレーマーに臆することもなく対応できるようになろう。そうなれば、クレーマーが何を求めているのかを知れるか、知れることにつながるであろう。議会・議員は、クレーマーが何を求めているのかを把握することが求められる。
 議会報告会に積極的に出席する人は、クレーマーに限らず、議会にいいたいことがあるか、議会に助けてほしいことがあるのではなかろうか。例えば、議会の活動が見えない人や、行政職員の前例踏襲を打破してほしいという人である。議会には、腰を据えて市民に対応することが必要である。クレーマーに限らず、議会報告会に出席する人、議会を頼ろうとする人と共知・共苦することが議会・議員には求められている。
 中村雄二郎は、『臨床の知とは何か』の中で、「〔医者は、〕)一人の人間として患者の苦しみや痛みを他人事だと思わないこと〔が求められる〕」(〔 〕内は筆者追記)(中村 1992:202)と述べているが、議会・議員にも、対話を通して市民の苦悩を共有・共苦し、議会のなすべき課題をピックアップし、探究することが求められている。
 もちろん、そのためには、敵対的言説(相手を敵とみなして対抗する言葉)を抑制する必要がある。内村鑑三は、「悪しき手段を以て、善き目的に達することはできない」(内村 1990:63-64)というが、「敵対的言説をもって、善き目的に達することはできない」であろう。

結び

 私たちには、世界共通文化と地域個性文化を生かした地域経済により、構造的不均衡を解消するなど正しい目的に余裕を持って取り組むことが求められている。また、寛容はそのために必要な心である。
 議会には、常に真摯な議論が期待される。その真摯な議論は議員一人ひとりの心がつくり出す。議会といえども、心が紡ぎ出す人間関係には、知と情の兼ね合いが求められる。その意味では、自己のすべての行動があらゆるものにつながってくるといえる。そして、すべての行動は、すべて一つの心がつくり出している。
 斎藤は、より良い未来を選択するためには、市民の一人ひとりが当事者として立ち上がり、声を上げ、行動しなければならない(斎藤 2020:6)と述べているが、より良い未来を選択するためには、議員一人ひとりが当事者として、市民からの受託者として立ち上がり、声を上げ、行動しなければならない。議員の心には、様々な葛藤があろうが「怖いことは恥ずかしいことではない」、「恥ずかしいことは逃げることである」という気持ちが求められる。その気持ちと実践の有無が、求められる融通無碍や寛容の程度を示す判断基準となるのかもしれない。議員そして議会の活躍に期待したい。

(1) 本稿にいう、「世界共通文化」及び「地域個性文化」は、松下 1991による。

■参考文献
◇内村鑑三(1990)『非戦論』岩波書店
◇斎藤幸平(2020)『人新世の「資本論」』集英社
◇中村雄二郎(1992)『臨床の知とは何か』岩波書店
◇松下圭一(1991)『政策型思考と政治』東京大学出版会

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