2022.08.10 政策研究
第8回 政策(世界共通文化・地域個性文化による地域経済)と寛容
地域個性文化である風土・風景・風情を生かした経済:1次産業から6次産業までの絡み合い
経済につながる地域個性文化としては、例えば、図のようなものがある。このような取組みは、地域個性文化を観光客などの訪問者が学んだり・楽しむことで、地元の人々の暮らし・経済にも役立つ。例えば、観光客が地域のバスや電車に乗ったり、飲食店で食事をすれば、それらの収益増加につながる。そうすることで、バスや電車あるいは飲食店の事業が継続され、その事業を利用していた地元の通勤・通学者・消費者・通院者・障がい者等の生活にも役立つことになる。また、地元の農産物を観光での食事や土産品などに活用するなど、産業間の波及効果が見られる例もある。
このように、地域個性文化による経済の発展には、1次産業から6次産業まで絡み合っていることが少なくない。そして、産業が絡み合うためには地域個性文化の可視化が必要になる。
出典:筆者作成
図 経済につながる地域個性文化の例
地域個性文化である風土・風景・風情を生かした経済:「スロー」、「スモール」、「シンプル」
文明は拡張して破滅するおそれがあるが、破滅しないためには、斉藤幸平がいうように経済成長が、人類の繫栄の基礎を切り崩しつつあるという事実(斎藤 2020:5)を忘れてはならない。そして、そのためには経済を「スロー」、「スモール」、「シンプル」にすることが求められる。「スロー」、「スモール」、「シンプル」であることは、間違いを少なくする。「スロー」、「スモール」、「シンプル」であれば、非常時の対応が利きやすくなる。新しい情報が入ってきやすくなる。自分が知らない能力を知る機会が多くなり、新しい時代を乗り越える可能性が高まる。「スロー」、「スモール」、「シンプル」は、これまでの「速い」、「ラージ」、「複雑」からの価値観の転換を伴う。今や経済政策も、「スロー」、「スモール」、「シンプル」の視点で再構築することが求められている。
「速い」、「ラージ」、「複雑」では、ゆがめられた情報に気づかないこともある。「速い」、「ラージ」、「複雑」は、「偏見がある」、「個人レベルのリテラシーが低い」、「情報がアップデートされていない」、「原典に当たっていない」、「目立つことを扱いたいという心情」などの状況下では、間違いを起こしやすい。場合によっては、ショック・ドクトリン(火事場泥棒)が問題を起こすかもしれない。