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2022.07.25 政策研究

第6回 我がまちの温室効果ガス排出量を計算してみよう(4)

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基本は、GHG排出量の将来推計値をできる限り正確に推計すること

 将来推計値はGHG排出量の削減目標設定の根幹にかかわる値であり、将来推計値の設定次第で、我がまちのGHG排出量の削減目標値が変化する。
 この将来推計値は、本連載第2回で紹介した、ベースラインアンドクレジット制度と考え方において共通する。ただ、ベースラインアンドクレジット制度は、企業においては、GHG排出量の削減量をクレジット化し、市場で売買するものであり、一方、自治体においては当面、クレジット化は想定されていない。
 ベースラインの設定方法は、先ほど簡単に紹介したように、主に2種類に分類される。A「基準年度排出量比で総量削減目標を設定する例」とB「目標年度のBAU排出量比で総量削減目標を設定する例」である(図1)。


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出典:環境省「地方公共団体実行計画(区域施策編)策定・実施マニュアル(算定手法編)」(2022年)210頁

図1 BAU排出量比で総量削減目標を設定する場合のイメージ


 Aは基準年度の排出量を固定し、そこから目標年度の目標排出量を引くことで、その差が目指すべき排出削減量となる。Bの場合は、基準年度の排出量ではなく、目標年度のBAU排出量をまず設定し、そのBAUから目標年度の排出量を引いて、目指すべき排出削減量を求めるものである。ここでBAUという耳慣れない言葉が出てきている。BAUとは「今後追加的な対策をとらず、設備や機器の技術や性能、生活スタイルが現時点のもののまま推移した場合を、現状趨勢(すうせい)又はBAU(Business as usual)ケースといいます」(「浜松市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)[2021]」(2021年)9頁)。若しくは、削減努力を何もしなかった「なりゆきまかせ」、あるいは山形市のように「なりゆきベース」と称した方が分かりやすい。
 図2に北九州市の事例を掲げた。
 この図を見てもらえば分かるように、北九州市の場合は、①に将来推計として「現状すう勢」(なりゆきベース)、つまりBAUの数字を設定。いずれも2013年度より、「その他の分野」以外は減少している。この数字をベースに、そこからGHG削減量を減じている。もし、A「基準年度排出量比で総量削減目標を設定する例」を用いて算出すると、47%削減を達成するためには、1,835万-980万=855万トンのGHG排出量を削減しなくてはならないが、B「目標年度のBAU排出量比で総量削減目標を設定する例」では、BAU排出量がそもそも2013年度に比べて、なりゆきで減少しているので、1,604万-980万=624万トンの削減で、2013年度比47%削減を達成できる。


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出典:「北九州市地球温暖化対策実行計画」(2021年)51頁

図2 北九州市の削減目標試算結果


 我が国の自治体のほとんどは、将来的な人口減が予想されている。これまで紹介してきたように、GHG排出量は、人口に比例する部分が多い。よって、ほとんどの自治体では、年度を追うごとにベースラインは低くなっていく傾向があるといってよいだろう。
 図1の例示では、BAU排出量が、基準年度や現状年度より高くなっている想定で描かれているが、例えば浜松市の「温室効果ガス排出量の将来推計(BAUケース)」の場合(図3)でも、浜松市のような工業出荷額の多い市であっても、将来推計値が右肩下がりになっている。


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出典:「浜松市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)[2021]」(2021年)9頁

図3 浜松市の「温室効果ガス排出量の将来推計(BAUケース)」


 いずれにせよ、重要なのは、より正確な値に基づいて推計することであり、B「目標年度のBAU排出量比で総量削減目標を設定する例」を用いることが望ましい。

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