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2022.07.25 政策研究

第6回 我がまちの温室効果ガス排出量を計算してみよう(4)

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前所沢市議会議員 木田 弥

【今回のテーマから考えられる一般質問モデル案】
〇我がまちでは、2030年度及び2050年度には、2013年度比で何パーセントのGHG(温室効果ガス)排出量の削減を目指すのか?
〇2030年度の削減目標は、国の削減目標に合わせるのではなく、実現可能な値を積み上げて設定すべきではないのか?
〇我がまちでは、GHG排出量の総量削減目標を「基準年度排出量比」で設定しているのか、それとも「目標年度のBAU(Business as usual)排出量比」で設定しているのか?
〇計画の精度を高めるためには、「目標年度のBAU排出量比」を採用すべきではないか。「目標年度のBAU排出量比」を採用していないとするならばなぜか?

 前回は、「製造業」から排出されるGHG排出量について、我がまちの事例に当てはめて自ら計算していただいた。GHG排出量を計算するための基本式である「GHG排出量=活動量×排出係数」が背景で作動していたことを理解していただけたと思う。ここまでくれば、GHG排出量の現況推計については推計方法のみならず、実際に自分で検算することまでできるようになり、さらには議場でも現況推計については自信をもって質問できるようになったことと思う。
 今回は、現状のGHG排出量の現況推計から一歩進んで、我がまちのGHG排出量の将来推計手法について紹介する。将来推計ができれば、一気にGHG排出量削減目標についても議会において議論できる素地が養われる。

GHG排出量削減目標決定にGHG排出量の将来推計は欠かせない

 各自治体の地球温暖化対策実行計画(区域施策編)に書き込まれていることが多いのが、GHG排出量削減目標である。例えば、茨城県つくば市は「中期目標:2030年度に2013年度比で26%削減。長期目標:2050年度に2013年度比で80%削減」、東京都小金井市は「市域からの温室効果ガス排出量を2030(令和12)年度までに、2013(平成25)年度比26.0%(91.5千t-CO2)の削減」、埼玉県所沢市は目標年度を2030年度ではなく、2028年度としており、2013年度比で22.9%削減、福岡県北九州市は意欲的で、ほぼ国の目標に沿った削減目標を設定しており、2030年度には、2013年度比で約47%の削減、2050年度には実質カーボンニュートラルを目指すことを公表している。
 いずれも2013年度比での削減目標が設定されているケースが多い。これは、我が国が国際公約で、2013年度のGHG排出量を基準にしてGHG排出量の削減目標を設定していることに合わせたためである。また、つくば市と小金井市の2030年度削減目標が26%であるのは、菅前首相が、2021年4月に、削減目標を切り上げる前の我が国としての2030年の削減目標が26%であったことに由来すると思われる(1)
 削減目標を算出するに当たってまず必要となるのが、我がまちからのGHG排出量である。この点については、これまで解説してきたので、その算出方法は理解していただけたことと思う。
 続いて必要になるのが、目標年度の我がまちからのGHG排出量の将来推計値である。
 GHG排出量の将来推計値の最も簡単な算出方法は、国の目標と合わせて、例えば2013年度比で47%、あるいは改定前の目標値である26%と定めてしまえば、簡単に算出できる。つくば市、小金井市、北九州市などは国の基準に基づいて目標年度のGHG排出量を設定し、それに合わせて削減量を積み上げていったものと思われる。
 一方で、国の基準ではなく、独自の削減目標を設定している自治体もある。埼玉県さいたま市は2013年度比35.0%以上削減。所沢市も目標年度は2028年であるが、22.9%削減としている。静岡県浜松市は、基準年度(2013年度)比で2030年度までに30%の削減を表明。国の目標値と乖離(かいり)している削減目標を設定している自治体は、2030年度までに削減可能なGHG排出量を積み上げていって、その推計値と2013年度との差を削減率としているようだ。
 以上述べた二つの方法のうち、どちらを選択するかは悩ましいところであるが、やはり国の目標値に達しなくても、実際に実行可能な削減量を積み上げる方が、実効性が高いであろう。国の目標値もまた、変更されるリスクも考慮しなくてはならない。
 一方で、バックキャスティングの考え方からすれば、あえて達成が難しい目標値を掲げて、それに向けて工夫を凝らすことも否定すべきではないし、そのことによってGHG排出量削減の破壊的イノベーションを促すことも考えられる。
 ここで注意していただきたいのが、単純に2013年度のGHG排出量と目標年度のGHG排出量を比較する場合と、削減努力を何もしなかった「なりゆきまかせ」(山形県山形市では「なりゆきベース」(2)とうまく表現)の場合の目標年度のGHG排出量を考慮して比較する場合があることである。

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