2022.07.25 議会改革
第30回 議員報酬を考える─議員報酬をめぐる議論と動き─
5 議員報酬の減額・支給停止
近年、議会の会議等を欠席した議員に対して、その議員報酬や期末手当を減額ないし支給停止をする条例を定める議会が増えている。
例えば、市議会実態調査によれば、2020年12月31日現在、全国815団体のうち207団体(25.4%)が、欠席又は出席停止議員に対して議員報酬・期末手当を減額する、あるいは支給停止をする条例を定めている。減額又は支給停止の対象となる事由で最も多いのは病気等による一定期間の欠席であるが、懲罰による出席停止の場合や、逮捕・拘留その他の身体の拘束を受けた場合を対象としているところもある(28)。都道府県では、2020年4月1日現在、7県議会で長期欠席した場合の措置を条例で定めている(全国都道府県議会議長会「第14回都道府県議会提要」)(29)。
既に見てきたように、議員報酬は職務・役務の対価とされており、また、議員が議会の会議等に出席することは当然果たすべき義務であり、行政実例(昭和24年8月25日、昭和32年5月16日)は、欠席議員に対し議員報酬を減額する旨を条例に規定すること、懲罰議員に対し議員報酬を減額する旨を条例で規定することは、それぞれ差し支えないとしているところである。
ただ、議員の地位は選挙によるものであり、その身分を失う場合が法律上限定されていることなどからは、議員報酬の支給の趣旨なども踏まえつつ、議員報酬の減額や支給停止ができる場合やその範囲について検討することも必要だろう。
なお、議員報酬の辞退や返還といったことが話題となることもあるが、議員報酬や期末手当の支給については、条例事項とされている一方、議員報酬請求権の放棄や議員報酬の一定部分の返還についても、公職選挙法199条の2で禁止される寄附に該当するものと解されていることからは、それを認めるのであれば根拠条例の改正などによるのが相当とされている。
条例で議員報酬や期末手当の減額又は支給停止がなされるのは、①病気、不在等による一定期間を超える欠席の場合、②懲罰による出席停止の場合、③議員が犯罪容疑で身体を拘束されている場合などがあり、長期欠席のために議員の職責を果たせない場合と議会への住民の信頼に反し議員としての職責を果たせない場合とに整理されることもある。
これらの妥当性については、議員報酬が職務に対する対価ということからは、議員が一定期間欠席するということは、その間は、議員としての活動が一切行われていないとまで見るのかどうかは別として、少なくとも議員としての職責を果たしていないとみなすことができ(30)、いわゆるノーワーク・ノーペイ(no work no pay)の原則を当てはめるならば、その欠席の期間については議員報酬を支払う主な根拠となる職務遂行がないとして、欠席議員に対する議員報酬の減額や支給停止を条例で定めることはとりあえず正当化されうることになる。
もっとも、その場合に、①の欠席の場合については、何の欠席を問題とするのか(対象とする議会活動の範囲)、問題とする欠席期間はどのくらいとするのか、いかなる理由によるものであっても対象とするのか、どの程度の減額や支給停止とするか(可能な範囲・程度)などが問題となりうる。すなわち、本会議だけなのか、それとも委員会や派遣なども含むのか、全員協議会などの協議・調整の場まで問題とするのかどうかであり、また、病気等やむをえない事由により欠席する場合については、一定期間以上の長期に欠席する場合に限るかどうかという問題である。その場合に、短期間の欠席まで対象とするのはさすがに慎重であるべきであり、実際には、欠席が90日や60日を超える場合としている例が少なくないようだが、一月とか、一定例会などとする例も散見される。また、会議規則上の正当事由かどうかということとリンクするものではないとはいえ(31)、その例外を設けるかどうかの考慮も必要であり、例えば、公務上の災害による場合、女性議員の妊娠・出産の場合、感染症による場合などを対象外とするかどうかが問題となりうる。このほか、減額・停止の程度については、期間に応じて減額幅を変える方式をとり、最大でも50%にとどめるところや365日を超える場合には100%減額としている例などが比較的多いようであるが、最近は、一定例会の欠席の場合の翌月から出席月の前月までを不支給とするところもある。