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2022.07.25 議会改革

第30回 議員報酬を考える─議員報酬をめぐる議論と動き─

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4 議員のなり手不足と議員報酬

 町村議会を中心に小規模な自治体議会の議員については、そのなり手不足の問題が顕在化しているが、その原因の一つとして、都道府県議会議員や市議会議員と比べて、大幅に低い議員報酬額があるともいわれる。その平均月額である21万円余については、子育て世代が議員報酬だけで生計を立てていくのが困難な水準であり、多くの議員が自営業者・農業者、年金受給者などに偏る一因ともなっているとの指摘もある。議員のなり手不足に関連し、全国町村議会議長会の検討会は、報酬月額17万6,000円未満の議会では、無投票当選となる議会の割合が非無投票の議会の2倍以上になるとの分析結果を示し、報酬の下限値の要素の考慮の必要性も指摘している(26)
 議員報酬と議員のなり手の問題が深く関連していることは否定できないが、単純に低い議員報酬→議員のなり手の偏り・不足→不活発な議会活動→住民の批判・不信→議員の定数や議員報酬への厳しい視線といった負のスパイラルを描き出して議論することには慎重な考慮も必要だろう。議員報酬のあり方については、自治体議会議員の位置付けだけでなく、自治における議会の位置付けやあり方にまでかかわってくる問題であり、住民とともに考えていくべき問題である。
 もっとも、自治体議会議員の議員報酬の水準がある程度定まってから40~50年以上が経過し、その間に、自治体や議会を取り巻く状況は大きく変化し、議会や議員の活動(量)にも変化が見られるだけでなく、少子高齢化と人口減少の進行、自治の進展などに伴い、今後さらに変化していくことが予想される。そのことを踏まえつつ、適切な水準を模索していくことが求められているといえる。
 この点、それぞれの議会で、検討が行われるようになっている。
 例えば、議員報酬の試算の方式としては、①市政・町政への貢献度を把握しそれを基に議員報酬を求める方式(収益方式)、②議員活動量に基づき議員報酬を試算しようとする方式(積算方式)、③議員の活動量を算出し長の活動量と比較してその割合を長の給料額に乗じる原価方式など長の給料額を基準とする方式、④執行部職員の給料額を基準とする方式、⑤類似団体等との比較による比較方式、⑥日当を根拠に求める方式などが論じられているようであり、それぞれのメリットとデメリットや現実的可能性を考慮しながら(27)、試算なども行いつつ、検討を行っている議会も見受けられる。また、実際に、議員報酬を増額する議会も散見されるが、その根拠については、類似団体を参考、議員の活動量(日数・時間)、執行部職員の給料額を参考などいろいろなものとなっているようだ。
 いずれかの方式によるほか、要素としていくつかの方式の考え方を取り入れ、組み合わせながら水準を決めるといったこともあるように思われるが、結論がいずれになるにせよ、そのような何らかの基準を模索し、根拠を明確にしようとする試みが行われていることは評価されるべきであり、議員報酬の額の改定に当たっては、住民の意見も反映しつつ、説明責任をしっかりと果たすことで、住民の理解や信頼が得られるようにしていくことが重要となる。

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