2022.07.25 議会改革
第30回 議員報酬を考える─議員報酬をめぐる議論と動き─
【コラム】費用弁償
自治体議会の議員は、職務を行うために要する費用の弁償を受けることができるとされるが、この費用弁償をめぐっては、どこまでが職務なのか、どの程度の額を支給できるかが問題となりうる。この点、最判平成2年12月21日民集44巻9号1706頁や最判平成22年3月30日裁判集民233号391頁は、議会が地方自治法203条5項(現4項)に基づき、その議員等に対する費用弁償に関する条例を制定する際に、あらかじめその支給事由を定め、それに該当するときには標準的な実費として一定額を支給することも許され、この場合、具体的な支給事由と支給額の決定は議会の裁量的判断に委ねられているとする。
ただ、その場合でも、あくまでも「職務」のためのものである必要がある。そして、この点、従来の行政実例によれば、事前説明会、全員協議会、閉会中の付託事件以外での招集された委員会などへの出席は「職務」に該当しないとされてきた(12)。これに対し、2008年の地方自治法改正で、協議・調整の場を会議規則で設けることができることとされ、これによって、自治体議会の現場では、会議規則で設けられた協議・調整の場への出席は職務(公務)となり、費用弁償の対象となると解されているようである。もっとも、費用弁償の対象となるためには、単に会議規則で定められただけでなく、議員の重要な活動の場であり職務にふさわしい機能を果たすものであることが必要といえる(13)。
また、実費を超えた額の支給については、住民から批判が出ることも少なくなく、定額とするのであれば合理的な説明が可能なものとする必要がある。実費による事務の煩雑さから概算による定額支給を採用するところは少なくないが、最近は、定額から実費の支給に変更したり、費用弁償自体を廃止したりする議会も増えている。
全国市議会議長会「市議会の活動に関する実態調査結果:令和2年中」(以下「市議会実態調査」という)によれば、費用弁償を支給しているのは351団体(43.1%)、不支給は459団体(56.3%)、その他が5団体で、支給している団体において、本会議を対象としているのが98.6%、委員会が100%、協議等の場が72.6%であり、定額が27.9%、実額が2.0%、距離に応じた交通費が55.3%などとなっている。町村議会における費用弁償の支給については、全国町村議会議長会「第67回町村議会実態調査結果(令和3年7月1日現在)」(以下「町村議会実態調査」という)によれば、「本会議」出席で、定額が188団体(20.3%)、実費が148団体(16.0%)、「委員会」出席で、定額が214団体(23.1%)、実費が147団体(15.9%)、「協議調整の場」出席で、定額が180団体(19.4%)、実費が137団体(14.8%)となっている。
このほか、自治体は、いかなる給付その他の給与も、法律又はこれに基づく条例に基づかずには、議会の議員、職員等に支給することができないものとされており(地方自治法204条の2)、法律に基づく条例とは、給与に関して法律の特別の定めがあり、その法律によって条例が種類、額、支給方法等を定める場合とされている。したがって、議員には、議員報酬、期末手当、費用弁償のほかは給付が認められておらず、社会通念上の儀礼の範囲を超えるような支給は違法となることにも留意が必要である(14)。