2022.07.25 議会運営
第84回 訴えの提起と応訴
次に、応訴した後、和解する場合には、応訴には議会の議決が必要ないことは先述したが、和解は応訴とは別個のものであり、当然に議会の議決を必要とする。
ところで、法96条1項12号に基づく和解に当たり、事前に議会の議決を得ることが必要であるが、執行機関の勘違い等により和解を行う前に議会の議決を得ず、和解後に議会の議決を得た場合、当該和解が有効かどうかが問題となるが、和歌山地判昭和59.10.31のとおり、議決を得るべき和解について議会の議決を得ていない時点で瑕疵(かし)ある執行行政となるが、事後に当該和解について議会の議決が得られれば、瑕疵は治癒され、有効な和解として将来に向かって効力を有するといえる。
◯「和解」と事後における議会の議決の効力(和歌山地判昭和59.10.31抜粋)
法96条1項11号(現行法では12号)にいう「和解」は、市議会の議決を得なければならないが、事後的ではあるが、その議決が得られており、現段階においては、右議決を経ない本件公金支出の瑕疵は治癒され、本件公金支出は適法となり、原告ら主張のように違法であるものとは言い得ない。
最後に、附帯控訴の際の議会の議決の有無であるが、そもそも附帯控訴とは訴訟の相手方によって提起された控訴審手続において、第一審判決の変更は不服申立ての限度で行うという民事訴訟法304条の原則を前提に、被控訴人が、自己に有利な判決を求めるものをいう。また附帯控訴は、相手方の控訴によって開始された訴訟手続に便乗してなされる付随的な申立てであって、相手方の控訴の取下げ等があれば附帯控訴もその基礎を失い、効力を失う。
この附帯控訴は、法96条1項12号における訴えの提起における判決による法律上の保護行為を求めるものであるという点において同じであり、行政実例昭和52.12.12のとおり議会の議決を必要とするといえる。
◯附帯控訴と議会の議決の要否(行政実例昭和52.12.12)
問 県を被告とする訴えが提起され、その第一審判決に対し、県が附帯控訴する場合は、議会の議決は不要であると解するがどうか。
答 議会の議決を必要とするものと解する。