2022.07.25 議会運営
第84回 訴えの提起と応訴
ここでまず、訴えの提起とは、原告が被告を相手方として裁判所に対し、権利又は法律関係の存否を主張し、その存否につき自己に有利な判決を求める要求を提起することをいう。
和解とは、例えば地方公共団体が当事者で、その所有に係る普通財産の賃借、あるいは土地の境界について、相手方との間に法律関係の存否や範囲等を争っているような場合、契約により当事者が互いに譲歩し合って、その間の争いをやめ法律関係を確定することをいい、訴訟上の和解と民法上の和解が含まれる。すなわち、行政実例昭和30.3.12のとおり、民法695条の規定による民事上の争議の和解、民事訴訟法89条の訴訟上の和解、同法275条の訴訟提起前の和解のすべてを含むといえる。ちなみに、民法上の和解とは、争っている当事者が互いに譲歩して争いをやめる契約を結ぶこととされ、訴訟上の和解とは、訴訟手続中、裁判所において民事上の争いの当事者が相互にその主張を譲歩して争いを解決する行為とされている。
なお、議会の議決事項とされている訴えの提起と和解は法律上それぞれ別個のものであり、訴えの提起の議決を経る際に、裁判の進行において和解することもあり得るという議決を行っていない限り、和解について改めて議会の議決を得る必要がある。
◯和解(行政実例昭和30.3.12)
問1 第96条第1項第10号(現行法では12号)の和解は、民法第695条の和解、民事訴訟法第136条(現行法では89条)の訴訟上の和解及び同法第356条(現行法では275条)の訴訟提起前の和解のすべてを含むか、又民法上の和解だけであるか。
2 訴訟の議決の中に訴訟上の和解を含ませておれば、更に和解について別に議決を要せず、訴訟議決の中にこれを含めていない場合は、更に和解については議決を要すると解すべきか。あるいは、右の和解は、訴訟の議決に当然含まれるのか。
3 訴訟の議決後、訴訟の提起前に、民事訴訟法第356条(現行法では275条)の和解の申立をする場合、当該訴訟議案中に和解の申立を含ませていないときは、この和解についも、更に議決を必要とすると解してよいか。あるいは、前号の場合と同じく、和解は訴訟中に当然含まれると解し、和解の議決は別に必要としないか。
答1 前段お見込のとおり。
2 前段お見込のとおり。
3 前段お見込のとおり。
これらを踏まえ、まず本問において議会が応訴する場合に議会の議決を必要とするかについては、法96条1項12号の訴えの提起には応訴は含まれないと解されているため、議会の議決は必要ない。訴えの提起は、地方公共団体が第一審において原告となる訴訟の提起だけでなく、控訴、上告も含まれる。