2022.07.11 政策研究
第7回 政策(減災)と安心・不安
マンガ・図表・パワーポイントの適切でない用い方と不安
人は同調しやすく、安易なこと・分かりやすいことに流れやすい。そして、複雑なことは無視しがちである。このことは、公選職(議員・首長)にも、職員(事務局職員・執行部職員)にも当てはまるかもしれない。そうであれば、分かりやすいことは大切ではあるものの、安易なこと・分かりやすいことに流れないようにすること、複雑なことを無視しないようにすることが必要である。
近年は、広報紙にもマンガや図表が用いられたり、説明会でもパワーポイントが用いられることが少なくない。このことは、分かりやすかったり、簡潔にまとまっているなどの効果があるものの、場合によっては自治体政府(議会・首長・職員)の意思が適切に表されていないことがありうる(表2参照)。広報紙であっても、説明会の場であっても、適切な言葉による表現が必要である。この適切な言葉による表現を前提とした上で、マンガ・図表・パワーポイントなどを活用することが求められる。
この認識なくして、適正な自治体政府の運営はなしえない。市民・団体・法人も自治体政府(議会・首長・職員)の意思を適切に確認することができない。そのため、市民・団体・法人も自らの目指すべき方向性が見えなくなり、そのことが地域に不安をもたらし、地域が混乱に陥る可能性が高まる。
出典:筆者作成
表2 自治体政府(議会・首長・職員)の意思が適切に表されているとは限らない場合の例
災害を経験することで「大切なこと」に気づく、「大切なこと」が確保されていることは安心につながる
人は、災害を経験することで「大切なこと」があることに気づくこともある。「大切なこと」が確保されていることは「安心」につながる。例えば、「命」が大切なことはいうまでもないが、「救出」されたと聞けば「安心」できる。その意味では、災害は何が「大切なこと」であるかを感じ取れる機会であるとともに、災害からの「救出」は「安心」をもたらす機会でもある。災害を経験しなければ、「大切なこと」に気づかないこともあろう。幸せなときには、「大切なこと」や「安心の必要性」に気づきにくいか、気づかないかもしれない。
地域政策の安心と不安:外国人の「言葉の問題」
今井照によれば、地域社会や市民生活が今日と同じように明日も繰り返すこと、それを妨げる障害物をいち早く感じ取り、克服していくことが地域政策であるという。そして、自治体職員はパソコンを離れて地域を歩くことが必要であり、市民は声を上げて自治体(政府)をうまく使いこなすことが重要になるという(今井 2018:179)。ここにいう地域政策には、当然のことながら防災も含まれよう。
市民に外国人がいれば、「言葉の問題」が生じることもある。外国で言葉が通じないことは心細い。災害時には、その心細い気持ちが大きくなるだろう。近年では、スマートフォンの翻訳機能を利用することもできるが、自治体によっては、日本語と外国人母国語の対比表や、絵付きカードを作成し、市民に配布したり、保育や救急搬送のときに役立てているところもある。言葉は、安心にも不安にもなりえる。