2022.06.27 議会改革
第29回 自治体議会と多様性(2)
セクハラは、環境型セクハラが99.3%であり、具体例として、懇親会等で寄ってきて酔った勢いで体を触り、周りもその場の雰囲気に流されて注意等をしない、控室で下ネタを大声でいいながら周りの反応を見て笑っている、女性議員が同じ会派の男性議員に対して無理やり体を密着させる、酒席の大勢の前でチークダンスを強要し胸などを触られる、閉経しているか尋ねたり、そうであればもう女ではないなと笑う、などの例が挙げられている。マタハラは、制度等の利用への嫌がらせ型が58.3%・状態への嫌がらせ型が41.7%となっている。
有権者から議員へのパワハラでは、「精神的な攻撃」が85.7%、個の侵害が13.0%であり、具体例としては、自宅に繰り返し電話をされ「税金泥棒だ」、「24時間対応できないなんて、議員失格だ」といわれる、選挙中にプライベートな事柄(人間関係、宗教等)でネットにデマを流されたり家族や兄弟のことで嫌がらせを受ける、投票したのだからと違法のおそれのある行為等を迫られる、自宅の電話番号や住所等の個人情報をSNS上に無断で公開される、結婚や出産等への強いプレッシャーを受ける、異性との交際関係等を暴露される、などがある。
セクハラは、環境型セクハラが98.7%であり、具体例として、選挙活動中に支援者から体を触られたり抱きつかれたりする、ヌード写真や有権者本人の性生活についてメールで繰り返し送りつけられる、当選させたのは俺のおかげだからと無理やりキスをしたり身体接触を求められる、ポスターにわいせつな内容を書き込まれる、などが挙げられている。マタハラは、制度等の利用への嫌がらせ型が66.7%・状態への嫌がらせ型が33.3%となっている。
これらを踏まえ、内閣府では「『政治分野におけるハラスメント防止研修教材』等の作成に関する検討会」において、議会などがハラスメント防止研修で使う教材づくりが進められている。
他方、自治体においては、議員のハラスメントの防止等について、政治倫理条例に基づく政治倫理基準などで定められていることがあるほか、ハラスメント防止条例を制定しているところもある。その場合には、議員も対象に含むものと、議員だけを対象としたものが見られるが、そこで特に問題とされているのは、議員による自治体職員に対するハラスメントである。
例えば、狛江市の「職員のハラスメントの防止等に関する条例」は、前市長のセクハラ問題を受け、議員により策定作業が進められ、2018年に制定されたものである。ハラスメントを「セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントその他の職員に対する誹謗、中傷、風評の流布等により人権を侵害し、又は不快にさせる行為」と定義した上で、市長、副市長及び教育長並びに議員は、ハラスメントの事実があると疑われたときは、自ら誠実な態度をもって疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明確にするよう努めること、職員は、市長が定める指針に従い、ハラスメントをしてはならないことが、それぞれ責務として規定されている。第三者機関としてハラスメントに関する苦情処理委員会を設置するとともに、市長は、事実関係の公正な調査によりハラスメントの事実が確認された場合は、市長等や議員については公表、職員については懲戒処分等を行うことができるとしている。
また、川越市の「議会ハラスメント根絶条例」は、議員による職員へのハラスメントが問題となったことを受け、議員提出により2019年に制定されたものであり、議員によるハラスメントの防止・根絶を目的とし、そのための措置として、議員に対する研修、職員からハラスメントに関する苦情の申出があった場合の議長による速やかな事実関係の把握、議員によるハラスメントを確認した場合の当該議員の氏名の公表等について規定している。同じく2019年に制定された世田谷区の「議会議員による職員に対するハラスメントに関する条例」では、その前文で議員の地位による影響力を不正に利用したハラスメント行為は断じて許されるものではないことがうたわれ、議員の責務として「職員に対するハラスメントが個人の尊厳を不当に傷つけ、労働意欲を低下させることを自覚し、職員の人格を尊重して活動しなければならない」とされるとともに、議会による研修の実施と区長から職員に対するハラスメント事案の報告があった場合の措置について規定されている。
このほか、都道府県議会としては初めてとなる、2022年6月に制定された「福岡県における議会関係ハラスメントを根絶するための条例」は、県内すべての議員によるハラスメントや議員・議員になろうとする者に対するハラスメントの根絶を目指し、議会活動・議員活動・準備活動を含む選挙運動その他の政治活動におけるハラスメントについて、専門的な知識・経験をもつ弁護士等が相談員となり調査に当たり、その報告や意見を踏まえて、議長が必要に応じて注意喚起や勧告を行い、勧告に応じないなどやむを得ない場合には、相談内容・調査結果等を公表することができるとしている。県議会議員だけでなく、いわゆる「票ハラスメント」などを受けた候補者等も対象としているほか、県内の市町村議会やその議員からの相談にも応じ、必要な調査・助言などを行うとしているのが特徴だ。