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2022.06.27 議会改革

第29回 自治体議会と多様性(2)

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7 ハラスメント問題

 近年、自治体議会をめぐり問題となっているのが、「ハラスメント」である。
 内閣府の「女性の政治参画への障壁等に関する調査研究報告書」のうち、男女の自治体議会議員に対するアンケート調査の結果によれば、実際に議員活動や選挙活動中に、有権者や支援者、他の議員などからハラスメントを受けた経験があると回答したのは、全体の42.3%、女性の57.6%、男性の32.5%であり、ハラスメントの内容では、女性は「性的、もしくは暴力的な言葉(ヤジを含む)による嫌がらせ」(女性26.8%・男性8.1%)が最も多かったのに対して、男性は「SNS、メール等による中傷、嫌がらせ」(女性22.9%・男性15.7%)が最多であった。「性別に基づく侮辱的な態度や発言」(女性23.9%・男性0.7%)、「身体的な暴力やハラスメント(殴る、触る、抱きつくなど)」(女性16.6%・男性1.6%)、「年齢、婚姻状況、出産や育児などプライベートな事柄についての批判や中傷」(女性12.2%、男性4.3%)などのハラスメントでは、女性と男性の差が大きく、女性が被害を受けやすい状況が見て取れる。
 なお、ハラスメントをなくすために有効な取組みについては、「議員向け研修」、「ハラスメント防止のための倫理規定等の整備」、「相談窓口の設置」が全体・男女別ともに上位3項目であった。
 ハラスメントは、世界各国の議会でも深刻な問題となっており、IPU行動計画では、差別とハラスメントのない職場環境の促進として、議会は、安全で敬意が払われ、差別やハラスメントのない職場環境を確保するために、①議会の儀礼、服装規定、人の呼び方や言葉遣い、慣習、規則についてジェンダーに基づいた分析を行う、②全議員を対象にジェンダーに関する意識向上の研修セミナーを実施し、新人議員の任命は必ずジェンダーに配慮した方法で行うようにするなどの措置を講じるべきとしている。
 日本でも、2021年に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が改正され、セクシャル・ハラスメントや妊娠・出産をめぐるマタニティ・ハラスメントを防ぐために、国や地方自治体は研修の実施や相談体制の整備など、必要な施策を講ずるものとされた(25)。
 これを受け、内閣府が、2021年10月~11月に、サイトを開設して自治体議会議員を対象にハラスメントの実態調査を行ったところ、1,324件のハラスメントの事例が寄せられたという。それによれば、有権者からのハラスメントが53.5%、議員からのハラスメントが46.5%であり、その内容は、パワー・ハラスメントが68.4%、セクシャル・ハラスメントが22.9%、マタニティ・ハラスメントが1.4%であり、議員から議員へのハラスメントでは、パワハラ58.1%、セクハラ24.8%、マタハラ1.9%、有権者から議員へのハラスメントでは、パワハラ77.8%、セクハラ21.2%、マタハラ0.8%であった。
 議員から議員へのパワハラでは、80.4%は「精神的な攻撃」(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)であり、具体的事例として、先輩議員からの「だからお前はダメなんだ」、「政治生命を絶たせてやる」等の罵声、男性議員からの「女は顔がよければ当選できる」、「女に政治は無理だ」、「男性だったらいいのに」等の言葉の繰り返し、公職選挙法違反や不倫といったデマ、懇親会で「次の選挙に出る奴はお酌して回れ」との言動などが挙げられている。このほか、私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」が9.2%、業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えない「過少な要求」が6.4%であった。前者の例としては、結婚していない理由や離婚の理由等の私的な事柄について対応に困るほどしつこく問われる、少子化対策や子育て支援について議論をしていると「議員をやめて結婚する方が幸せだよ」、「まずは子供を産んだら」とプレッシャーをかけられる、政治活動で遅くなった際「早く帰って子どもの世話や夕飯の用意をしないとだめじゃないか」、「旦那はかわいそうだ」といわれる、などの例が挙げられている。

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