2022.06.27 議会改革
第29回 自治体議会と多様性(2)
6 障害のある議員の議会活動への配慮
2006年に国連で採択され、日本も2014年に批准した「障害者の権利に関する条約」では、障害者が選挙に立候補し、実質的に在職し、あらゆる公務を遂行する権利を保護することなどにより、障害者が政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができることの確保を締約国が約束することをうたっており(14)、また、2013年に制定された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「差別解消法」という)では、地方自治体を含む行政機関等は、「その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」と規定されるなど、障害者の参加や社会的障壁の除去などに関する法整備が進められてきた(15)。
しかし、現状は、日本にいる障害のある人の割合は人口の7.6%であるのに対し、障害のある議員の割合は全議員の0.1%にとどまるといわれる(16)。
そのような中で、2019年の参議院選挙で重度の障害がある議員が誕生し、その活動や議院の側の対応が注目されることとなった(17)。
他方、それに先行してきたのが自治体議会であり、1980年代後半以降、障害のある人が選挙に立候補し、議員となるケースが増えており、それぞれの議会において対応が行われてきている。
障害のある議員が活動したり、障害のある人が議会活動に触れたりするためには、様々な環境整備が必要となる。
例えば、車いすの障害者のためには、車いすで議場に入場したり、発言席に移動したり、投票したりできるようにすること(会議室のフラット化・スロープ化など)が必要である。また、視覚障害者のためには、介助者・介護犬の入場、点字資料など、聴覚障害者のためには、手話による通訳や音声文字変換システム・発言字幕モニターなど、発声障害のある議員については、音声変換機能付きのパソコンによる発言や第三者による代読などを認めることが必要となる。
体をほとんど動かすことのできない重度障害の場合には、さらに特別の配慮やルールが必要となり、パソコンや代読による発言のほか、医療機器の議場への持ち込みや介助者の入場、採決や選挙などにおける介助者による意思表示・代筆・投票なども必要となりうる(18)。この点、重度障害のある議員のために独自のルールを整備してきた鎌倉市議会では、一般質問の際には事前に用意した原稿を議会事務局の職員が代読し、再質問がある場合は議会をいったん休憩にし、職員による聞き取りを行う取扱いが行われているほか、採決の際には、腕を上げられないため、挙手ではなく「挙足」での表決を認め、署名が必要な場合には足でサインできるようにするなどの対応も行われているという(19)。
このような特別の配慮については、次第に理解が進んできているようであるが、その一方で、効率性やコストの面からの批判の声もあるという(20)。
障害のある議員が活動するために一定の配慮がなされるべきことへの議会内外の理解を深めていくことが大事といえるが、どこまで配慮する必要があるのかについては、悩ましいところもある。