2022.06.10 政策研究
第6回 政策(交通安全、防犯、ジェンダー〔多様性〕、公文書管理)と信念・忖度
結び
雄弁者が真実を語っているとは限らない。うそをいっていなくとも黙っていることもある(雄弁者の不作為)。悪意で忖度する雄弁者の議論に、信念ある非雄弁者はどう議論で立ち向かうのか。その道は容易ではないかもしれない。しかし、道はある。即決せずに、時間をかけて熟考し、議論することである。
ところで、ミス(間違い)が重なると回復が難しくなるが、一つのミスであれば複数のミスが起きたときよりも回復しやすいであろう。行政がミスしても議会がしっかりしていれば、大きなエラーにはならないであろう。1980年代には、「行政の文化化」という言葉が「行政の文化化とは行政文化の自己革新である」(森 2022:73)という文脈の中で用いられた。
自己革新すべき行政文化の代表は責任回避やネガティブな意味での忖度であった(今でも、これらの課題は消えていないのであるが……)。
2000年代初頭からは、「議会文化の自己革新」の時代に入っているといえよう。「議会文化の自己革新」の時代には、「信念を持った議員の座標軸」が確かなものになることが求められている。もちろん、議会文化で自己革新すべき事項には、責任回避やネガティブな意味での忖度が含まれる。信念を持った議員の活躍に期待したい。そして、そうした「信念を持った議員のなり手」は、「市民型人間型の大量醸成」(松下 1991:52)により成り立ちうるであろう。
(1) 調査概要は、次のとおり。
・調査期間: 2019年1月~3月
・調査方法:郵送で調査用紙を配布・回収
・調査対象:1,788議会(都道府県含む全地方議会)
・調査有効数(率):1,788(100%)
(2) 代理議員制度等については、大森 2022:125を参照されたい。
■参考文献
◇大森彌(2021)『自治体議員入門』第一法規
◇新藤宗幸(2019)『官僚制と公文書─改竄、捏造、忖度の背景』筑摩書房
◇田中富雄(2018)『実例でわかる! すぐ使える! 公務員の議会答弁の書き方』学陽書房
◇NHKスペシャル取材班(2020)『地方議員は必要か 3万2千人の大アンケート』文藝春秋
◇松下圭一(1991)『政策型思考と政治』東京大学出版会
◇松下圭一=森啓編著(1981)『文化行政―行政の自己革新』学陽書房
◇森啓(2022)『自治体学理論の系譜 歩みし跡を顧みて』公人の友社