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2022.05.25 政策研究

第26回 区域性(その6)

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新規埋立地の境界確定

 しばしば、境界紛争が起きるのは、新たな区域がつくられる埋立て(又は干拓)の場合である(1)。このときには、自治体A・自治体Bの既存の陸上部分の区域A(例えば、地積45)と区域B(例えば、地積45)は、全く争いはない。しかし、新たに造成された埋立地Z(例えば、地積10)が、自治体A・B間にどのように帰属するのか、という境界紛争が起きやすい。Zが全て自治体Aに帰属すれば、45+10で自治体Aの区域は地積55になる。反対に、Zが全て自治体Bに帰属すれば、これまた45+10で自治体Bの区域は地積55になる。
 この紛争は、Aは45~55、Bは45~55の範囲で争いがあるが、いずれも、既存の区域45を失うわけではないので、ポジティブ・サムの争いのようにも見える。しかし、総和100(=45+45+10)からすれば、やはり互いに45~55になり得るゼロ・サムの争いであり、境界変更に伴う紛争と同質になる。
 埋立地の場合には、観念的には水面も市区町村の「従来の区域」であるとしても、現実の陸地としては「従来の区域」が存在しない。つまり、〈区域→住民→自治体為政者の意思決定〉という流れではなく、〈自治体為政者の意思決定→区域→住民〉、あるいは、〈住民→自治体の為政者の意思決定→区域〉という流れである。つまり、埋立地という新たな区域(「従区」)及びそれに付随する資源(「従民」や税源や権限)などが、既存の区域を持つ自治体A・Bの為政者及び住民にとっては、獲得を争う「獲物」となっていることが、より露骨である。
 もっとも、埋立地が完成し、その後、実際の人間活動が展開されていくと、埋立地は単なる区域ではなく、人間の張り付いた地域になっていく。とするならば、埋立地という区域Zに居住する住民(埋立地民)の意向は尊重されるべきところである。しかし、埋立地Z民は、独自の「自治体」を持つこともなく、また、A・Bどちらの自治体にも未加入であり、さらにA・Bどちらの自治体に入ったとしても圧倒的に少数派であり、ほとんど意思決定には主体的役割を果たすことはなく、単なる「従民」となってしまいがちである。当該埋立地の帰属について、埋立地Zに関わる当事者の意向は、反映しにくい意思決定構造である。ムラというムレ=人間集団が土地を持ち、また、土地を争う、という近世的なムラの論理の延長にも見えるし、国民という集団を前提とする近代主権国家・国民国家と相似的なものかもしれない。

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