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2022.05.25 議会改革

第28回 自治体議会と多様性(1)

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 ただ、いまだに政治的中立性を非政治性と誤解する向きも少なくないのが現状といえる。政治は、意見や利害の対立状況から生まれ、これを調整し決定するものであって、主権者教育も、そのことを前提に、根拠をもって主張し他者を説得し合意点を見いだす討議の能力を身につけさせる教育が必要であり、そのためにも現実の政治的な事象や課題を取り上げて議論を行うことが不可欠となることが、もっと理解されるべきだろう。
 他方、主権者教育のため学校側が外部の専門家を招きたいと考えても、専門家としてどのような人がいて、どのようなことを行いうるかなどの情報が把握・整理されていない状況にあるほか、学校に議員を招く取組みについては、政治的中立性の観点から複数の会派の議員を招くことが求められるなど、学校側が主導して行うことが難しい事情もあるという。
 外部の専門的知見を有する人から学んだり、実際に経験したりできるというのは、主権者教育として効果的な取組み・生徒の関心を高めることができる有効な取組みであり、自治体議会としても、これに適切な形で貢献していくことが求められているといえるだろう。
 早稲田大学マニフェスト研究所の「議会改革度調査2020」(18)によれば、議員と若者・学生との対話・交流の機会を設けている議会は156議会(11.3%)、中高生による模擬投票・議会・請願の活動支援を行っている議会が133議会(9.7%)、地域課題の解決に向けた中高生との協働活動を行っている議会が23議会(1.7%)などとなっており、主権者教育に取り組む議会はそれほど多くはない状況にある。
 その一方で、主権者教育に積極的に取り組む議会も徐々に増えており、例えば、可児市議会では、2013年度から市内の高校が行う「地域課題解決型キャリア教育(エンリッチプロジェクト)」を支援する取組みとして、地域で活動する団体と若い世代が関わる機会(地域課題懇談会)を設け、その団体が取り組む課題について団体関係者と若い世代、議員が意見交換を行っているほか、模擬選挙、高校生議会なども行っている。生徒が地域の課題を知り、自治に関心をもち、当事者意識の醸成につながる一方、議会にとっても、各団体関係者や若い世代の考えを聞くことで議会活動の参考となるとともに、若い世代を中心に議会の存在を身近に感じてもらえる、マスメディアを通じて議会活動を発信できるなどのメリットがあるという。また、松本市では、市議会と県立松本工業高校との交流から、同校の生徒が請願書を議会に提出し(19)、委員会で請願者である生徒に対し議員の質疑なども行われた上で、本会議で採択され、全国的に注目された。
 なお、主権者教育は、生徒や若者に限定されるものではなく、年齢を重ねても継続的に行われていくべきものであり、とりわけ、これまでそのような教育を受けてこなかった世代にも必要なものである。議会としても、意見交換会、模擬議会、傍聴ツアーなど、幅広く住民を対象としたシチズンシップ教育を展開していくことが求められており、そのことが住民の議会の理解の深化にもつながることになる。議会は、主権者教育を担うべき機関の一つであり、また、議会や議員自体が主権者教育の重要な素材ともなりうるものといえるだろう。
 最後に、主権者教育においては、正解が一つに定まらない論争的課題について、自分で考え、自分の意見をもちつつ、異なる意見や対立する意見にも耳を傾け、議論を交わしたり、他者の意見と折り合いを付けたりする中で、納得解を見いだしながら、合意形成を図っていくようにすることが重要であるという(20)。考えてみれば、これは、議会の作用そのものであり、その意味では、議員もまた常に学んでいく必要があるとともに、選ばれた者の役割として、主権者教育に取り組み、また、生きた素材たりうるように行動していくことが求められているといえるだろう。

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