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2022.05.25 議会改革

第28回 自治体議会と多様性(1)

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4 若者の参加の促進

 周知のように、2015年に選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられ、2016年6月から施行された。
 選挙権年齢の引下げは、若年層の政治参加の促進につながることも期待されたが、若年層の投票率は深刻な状況にある。国政選挙の年代別投票率は、2021年10月に行われた第49回衆議院議員総選挙では、10歳代が43.21%、20歳代が36.50%、30歳代が47.12%となっており(全年代を通じた投票率は55.93%)、また、2019年7月に行われた第25回参議院議員通常選挙では、10歳代が32.28%、20歳代が30.96%、30歳代が38.78%となっている(全年代を通じた投票率は48.80%)。地方選挙は、さらに深刻で、例えば、2019年4月の統一地方選挙での埼玉県議会議員選挙の投票率は、18歳32.22%、19歳27.55%、20~24歳18.26%、25~29歳18.61%、30~34歳24.1%、35~39歳27.09%であった(全体の投票率は35.52%)。残念ながら、国際的に見ても、日本の若者の投票率は低い水準にある。
 このような状況に対し、主権者教育の重要性が指摘され、選挙権年齢の引下げを契機に、様々な取組みが行われるようになっており、被選挙権年齢の引下げも引き続き課題となっている。

(1)主権者教育
 主権者教育については、2011年12月の総務省「常時啓発事業のあり方等研究会」最終報告書では、「国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者を育成していくこと」と捉えられるとともに、そのキーワードは「社会参加の促進」と「政治的リテラシーの向上」であるとし、その一環として「参加・体験型学習」と「政治教育」の充実の必要性が提起されている。また、2017年3月の総務省「主権者教育の推進に関する有識者会議」とりまとめでは、主権者教育の考えられる方向性として、「自身の生活や地域等の身近な問題から、最終的には社会全体の問題に至るまで、年代や環境に応じた題材を扱い、考える力、判断する力、行動していく力を醸成する多様な取組が求められる」とされ、発達段階に応じた取組みの方向性、計画的・組織横断的な取組みの方向性、国及び自治体による取組みの方向性が示されている。
 これらを踏まえ、学校などにおいて、主権者教育の取組みが行われてきた。
 すなわち、文部科学省が2019年12月から2020年1月に国公私立高等学校等を対象に行った主権者教育(政治的教養の教育)に関する実施状況調査によれば、2019年度における第3学年に在籍する生徒に対する主権者教育の実施状況は95.6%であった。また、具体的な指導内容について、「公職選挙法や選挙の具体的な仕組み」を指導している学校が84.6%、「模擬選挙等の実践的な学習活動」を行っている学校が47.3%、「現実の政治的事象についての話し合い活動」を行っている学校が34.4%となっており、指導に当たって選挙管理委員会や自治体、議会事務局、大学、関係団体・NPOなどの関係機関等と連携した学校がその他も含め51.8%であった(ちなみに議会事務局との連携は3.2%)。他方、2016年度及び2017年度に実施した総務省の「主権者教育等に関する調査」によれば、選挙管理委員会が出前授業を実施した自治体数は2016年度が894団体、2017年度が800団体であり、その内訳は都道府県で95.7%、指定都市で65.0%、市・特別区で61.1%、町村で15.6%となっている。
 なお、一部の自治体では、子ども議会として、模擬的に議会を体験する取組みが行われているほか、自治体議会議員が学校を訪問して生徒と対話する取組みなども行われている。
 もっとも、その一方で、様々な課題も明らかになってきている。
 例えば、学校での政治教育については、教育基本法が政治的中立性を要請しているため、政治的題材を扱うこと自体が避けられてきたところがあり、そのようなことから、学校で行われるようになった主権者教育の内容は、政治や選挙の知識学習や、投票を体験する取組みに重点が置かれ、生徒が主体的に考え、十分に議論し、意思決定を促す取組みは必ずしも多くないようだ。また、政治教育に関しては、2015年の文部科学省の通知(17)により、政治的中立性を確保しつつ、現実の具体的な政治的事象を扱うことや実践的な教育活動を行うことができることが明確化されたものの、現実の政治的事象を扱う際には、政治的中立性や公職選挙法上の選挙運動規制などとの関係から、18歳未満の政策討論、教員による判断材料の提供などについて留意する事項が多く、授業でどの程度扱えばよいのかといった戸惑いなども生じており、授業で扱いにくいとの声が少なくないようだ。

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