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2022.05.25 議会改革

第28回 自治体議会と多様性(1)

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(1)欠席事由の整備など
 IPU行動計画では、仕事と家庭の両立支援として、職場方針及びインフラが両性の議員が現在直面している仕事と家庭の実態を反映したものとなるよう、①審議時間を変更して(例:審議を圧縮して行う週を設ける、審議開始時刻を早める、遅い時間の議決を避ける、学校のスケジュールに審議日程を合わせる)、議員が選挙区に帰り家族と過ごせる時間を増やす、②議会内に託児所やファミリールームを設け、開会中も議員が家族と過ごせるようにする、③子どもが誕生した際は、男性議員も女性議員も育児休暇を取得できるようにする、④長期育児休暇が実施できない場合に、公務上の理由に加え、育児休暇を審議日程に欠席する正当な理由として認めるといった代替案を検討する、⑤授乳中の議員が審議に出席しなくていいように、代理投票やペアリング制度を利用できるようにするなどの措置を提示している。
 そのような中で、日本において近年環境整備が進められてきたのが、欠席事由の整備である。
 議員が会議又は委員会を欠席する場合には、その理由を付けて、議長又は委員長に届け出ることが会議規則で定められているのが一般的であるが、従来においては、単に「事故のため出席できないとき」とされていることが多かった。これに対して、女性議員の出産に対して特別の配慮がなされるよう、欠席の事由として「出産」を明記することを求める動きが生じ、各議会において出産を欠席事由として明記するための規則の改正・整備が進められてきた(9)
 ところで、自治体議会の議員については、労働基準法上の労働者ではないことから、同法の産前6週・産後8週の休業の規定の適用はない(10)。これに対して、自治体議会の女性議員についても、会議規則でそれと同様の産前6週・産後8週の産休期間の明記を求める動きが見られるようになり、2020年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、政治分野における男女共同参画の推進に向けて自治体議会・自治体での取組みの促進として、すべての市区町村議会において出産が欠席事由として明文化されるよう、また、出産に係る産前・産後期間にも配慮した会議規則の整備や育児・介護等の欠席事由としての明文化が促進されるよう議長会に要請するとされた(11)。そして、2021年1月には、女性活躍担当・男女共同参画特命担当大臣から全国三議長会に対して標準会議規則の改正等の検討の要請がなされ、これらを受けて、それぞれの議長会において標準会議規則の改正が行われた。
 それによれば、例えば、標準市議会会議規則では、「事故のため」出席できないときが「公務、疾病、育児、看護、介護、配偶者の出産補助その他のやむを得ない事由のため」に改正されるとともに(12)、出産のため出席できないときについては「出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)前の日から当該出産の日後8週間を経過する日までの範囲内において、その期間を明らかにして」、あらかじめ欠席届を提出するものと規定された。都道府県の標準会議規則では、やむを得ない事由として出産が例示される一方、看護と配偶者の出産補助が例示されていないなどの違いはあるものの、標準都道府県議会会議規則、標準町村議会会議規則もほぼ同様である。
 自治体議会の中には、先行して欠席事由の明文化を進めるとともに産前産後の期間を規定するところもあったが、上記の動きを受けて、会議規則の整備が進展することになり、内閣府が2021年7月時点で調査したところによれば、議会における欠席事由の整備状況については、都道府県議会では、育児及び家族の介護を欠席事由として明文化している議会の割合が増加し、全体の約8割となったほか、市区町村議会でも出産を欠席事由として規定するところが全体の約9割となるとともに、それ以外の育児、家族の介護、配偶者の出産、家族の看護を欠席事由と規定するところも、全体の6割を超えたという。このほか、出産を欠席事由として明文化している議会のうち、産前産後期間について具体的な規定を設けているところは、都道府県議会で約75%、市区町村議会で約73%とのことである。
 自治体議会の議員について、議会活動と家庭生活との両立を図る観点から欠席事由の整備が進められていることは評価される。もっとも、男女共同参画という大義やなかなか改善が進まないといった事情があったとはいえ、国の行政機関が様々な形で自治体議会の側に働き掛けを行い、他律的な形での対応となったことについては、地方分権や民主主義ということからは何か釈然としないものもないわけではないといった声も漏れ聞こえてくる。また、そのような中で、欠席事由の整備は行われたものの、会議の欠席が許される公務とはどのようなものをいうのか、やむを得ない事由に該当する育児・看護・介護とはどのようなものをいい、どの範囲まで認められるべきかなどの実際上・運用上の問題が残っているのであり、それらについては、それぞれの議会において、具体的な事案なども踏まえながら検討・模索し、適切なルールを構築していくことが求められていることを認識・自覚すべきだろう。
 

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