2022.05.25 議会改革
第28回 自治体議会と多様性(1)
3 女性議員の増加に向けて
178の国・地域の議会が加盟する列国議会同盟(IPU)は、議会の強化だけでなく、ジェンダー平等、若者の政治参加などにも取り組んでおり、2012年の第127回IPU会議では、「ジェンダーに配慮した議会のための行動計画」(以下「IPU行動計画」という)を採択した。
そこでは、ジェンダーに配慮した議会について、「その組織構造、運営、方式、業務において男女双方のニーズと利益にかなう議会。ジェンダーに配慮した議会は、女性の完全参加を妨げる障壁を取り除き、社会全般の手本となる事例又は模範を示す」と定義するとともに、(ⅰ)女性議員数の引上げと参加の平等の実現、(ⅱ)ジェンダー平等のための法律及び政策の強化、(ⅲ)あらゆる議会業務におけるジェンダー平等の主流化、(ⅳ)ジェンダーに配慮したインフラ及び議会文化の整備又は改善、(ⅴ)両性の議員全員がジェンダー平等に責任をもつ、(ⅵ)政党がジェンダー平等の擁護者となるよう奨励する、(ⅶ)議会スタッフにおけるジェンダーへの配慮とジェンダー平等の促進といった七つの行動分野を示している。
これらのうち、(ⅰ)では、各国の事情に応じて、各政党が選出する女性候補者のより多くが選挙で勝ちうる位置を占められるような特別措置を講じ、女性議員枠を設けるべく選挙法及び憲法の改正を提案すること、女性候補者及び女性議員に対する暴力行為を糾弾し、かかる行為の防止と処罰のための法的及び実際的な措置を講じることなどがうたわれており、前者については次の(2)で、後者については次回の7で取り上げたい。また、(ⅳ)においては、①仕事と家庭の両立支援、②差別とハラスメントのない職場環境の促進、③公平な資源と設備の提供の三つが挙げられており、①については次の(1)で、②については同じく7で述べることとしたい。
なお、IPU行動計画では、「議会におけるジェンダー配慮のための改革の着手と実施」の手続として「評価」を挙げ、IPUのジェンダー配慮自己評価ツールキットの活用と、ジェンダー平等の考えを議会の行動様式や業務に組み入れる方法に関する質問への回答という形式での実施などを求めており、日本の国会でもこれらを部分的に活用してジェンダー格差を自己点検する動きが出ている(8)。
これに対しては、代表の建前からすれば、議員は国民や住民の代表であって、特定の代表ではないのであり、女性の代表が女性というわけでもない、男性議員が女性の声を代弁することもできるのであり、女性が過少代表となっている見方は妥当ではない、女性議員が少ないことがなぜ問題なのか、などといった批判も見受けられる。
しかし、現実問題として、男性議員が女性の利益を十分に代表できているとは言い難く、また、性別が政策の選択に影響するとの議論も有力である。ただし、生活者の視点、あるいは女性特有の利益・関心・見方を反映させるための女性の参画の促進といった議論については、従来の固定観念や性的役割分担論を前提としたものとして、性差を捨象した男女の平等といった考え方とは相いれないものともなりかねないことに注意が必要だ。それはともかく、女性も含め多様な人々が政治過程に参加することで、議会政治や民主主義はより深化することになるのであり、また、民意の反映のあり方として女性があまりに過少代表となっている状況はやはり適切とはいえないのではないだろうか。