2022.05.25 議会改革
第28回 自治体議会と多様性(1)
2 女性議員が少ない理由
女性の議員がなかなか増えない理由については、政治的、社会的、経済的な様々な事情・要因が絡んでいるものと思われる。
そのような中で、内閣府が2017年度に行った「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究」(女性議員へのアンケート調査)によれば、その議員活動における課題や女性の自治体議会議員が少ない原因として、①議員活動と家庭生活との両立が難しいこと、②政治は男性が行うものという固定的な考え方が強いこと、③人材育成の機会が少ないことが上位に挙げられ、女性として差別されたりハラスメントを受けたりするとの回答も3割近くあった。
他方、2021年3月に発表された内閣府の「女性の政治参画への障壁に関する調査研究報告書」のうち、男女の自治体議会議員に対するアンケート調査(6)の結果によれば、立候補を決める段階から選挙期間中の課題として、女性議員の回答で多かったのは、「知名度がない」(女性59.8%・男性38.1%)、「仕事や家庭生活のため選挙運動とその準備にかける時間がない」(女性48.9%・男性36.5%)、「選挙運動とその準備の方法が分からない」(女性46.4%・男性40.6%)、「自分の力量に自信が持てない」(女性42.1%・男性18.5%)、「地元で生活する上で、プライバシーが確保されない」(女性40.4%・男性26.1%)であった。このほか、女性議員と男性議員とで差が大きかった項目としては、「当選した場合、議員活動と家庭生活との両立が難しい」(女性30.4%・男性18.5%)、「性別による差別やセクシャルハラスメントを受けた」(女性24.9%・男性0.9%)がある(7)。
また、議員活動を行う上での課題について、女性議員の回答で多かったのは、「専門性や経験の不足」(女性58.8%・男性41.8%)、「地元で生活する上で、プライバシーが確保されない」(女性36.6%・男性23.9%)、「性別による差別やセクシャルハラスメントを受けることがある」(女性34.8%・男性2.2%)、「人脈・ネットワークを使って課題を解決する力量の不足」(女性34.8%・男性22.2%)であった。女性議員と男性議員とで差が大きかった項目としては、上記の性別による差別とセクハラのほか、「議員活動と家庭生活との両立が難しい」(女性33.7%・男性13.7%)、「政治は男性が行うものだという周囲の考え」(女性30.6%・男性14.5%)などがあった。反対に、男性議員が多かったものとしては「議員活動に係る資金の不足」(男性41.5%・女性34.1%)、「生計の維持」(男性38.3%・女性25.6%)などがある。
女性議員を増やすために有効な取組みについて、女性議員が有効とした割合が高かったのは、政策立案に関する研修、選挙ノウハウに関する研修、選挙活動のサポートであるが、会議規則における出産・育児・介護等の場合の欠席規定の整備、ハラスメント対策も8割を超えており、社会全体の固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込みの除去も8割近くとなっている。
構造的・複合的な問題であり単純化は避けるべきであるが、以上から、自治体議会議員、とりわけ女性議員が直面する様々な課題が明らかになるとともに、女性議員が少ない理由がそれなりに浮かび上がってくるのではないかと思われる。