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2022.05.25 議会改革

第28回 自治体議会と多様性(1)

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(2)被選挙権年齢の引下げ
 諸外国の動きからかなり遅れて、選挙権年齢がようやく引き下げられたのに対し、衆議院議員・自治体議会議員・市町村長は25歳、参議院議員・都道府県知事は30歳とされている被選挙権年齢については、そのままとなっている。
 被選挙権の年齢については、選挙によって公務に就きうる資格という観点から、選挙権年齢よりも高く設定する、あるいは公職の種類によって年齢を異ならせるというのは、これまで、日本に限らず、一般的に行われてきたといえる。しかし、これについては、どこまで合理的な理由があるのか従来から議論があったところであり、また、諸外国の動向を見ると、選挙権年齢の引下げの流れの中で、被選挙権年齢を引き下げた国が少なくなく、被選挙権年齢を選挙権年齢より高めに設定する国がなお多いものの、選挙権年齢と同じとする国も少なからず存在している。
 すなわち、国立国会図書館資料によれば、議会・下院の被選挙権年齢が判明した194か国のうち、18歳以上が54か国(27.8%)、21歳以上が60か国(30.9%)、25歳以上が57か国(29.4%)であり、この三つの年齢要件のいずれかを定める国だけで全体の9割近くを占めるという(22)。また、2019年に選挙権年齢が19歳以上から18歳以上に引き下げられた韓国では、2021年12月に、国会や自治体議会の議員、自治体首長の被選挙権年齢を25歳から18歳に引き下げる改正が成立したことも最新の動きとして付記しておく必要があるだろう。
 民主主義ないし政治参加の歴史の中では、いわば常識とされてきたものが次第に疑われるようになり、やがて参加が拡大されるということを繰り返してきているのであり、被選挙権年齢についてもそのようなところがあるのかもしれない。
 日本でも、選挙権年齢の引下げが実現して以降、国政選挙での各政党の公約などに被選挙権年齢の引下げの検討などが掲げられたり、一部の政党から引下げのための改正法案が国会に提出されたりしているが(23)、なかなか進まない状況が続いている。その年齢をめぐっても、一律18歳以上とする案、一律20歳以上とする案、参議院議員と都道府県知事については25歳や23歳以上とする案などが見られる。
 被選挙権年齢を引き下げるメリットとしては、世代間格差などが問題となる中で、若い世代の議員が増えることにより、若者の声が反映しやすくなることが挙げられるが、同世代の出馬や議員への就任によって政治をより身近に感じやすくなることで、若者の投票率の向上につながる可能性のほか、選挙教育に偏りがちな主権者教育の内容・あり方にも影響を与える可能性なども指摘されている。
 そもそも、被選挙権の意義・性格をめぐっては、従来は、これを権利ではなく、権利能力あるいは資格ととらえる説が有力であったが、これに対して、近年は、権利としての性格を認める議論が有力となり、そこでは、立候補する権利ないし自由としての意味が重視されるようになってきている(24)。また、被選挙権については、選挙権と表裏の関係にあるところがあり、被選挙権の制限は、選挙人の選ぶ権利・選択肢を限定することにもつながりうる。
 ただし、有権者が選択するとはいえ、当選すれば公の意思の形成や公権力の行使に関わる公職に就くことになるのであり、その場合、能力や経験といったものが全く関係ないとまで言い切れるかどうかは微妙であり、直接にそれらを要件とはできない以上、それらを年齢要件に反映させることが合理性を欠くとまではいえないだろう。ただし、その場合でも、それによって必要以上に年齢を高く設定するというのは妥当ではない。また、年齢による区分というのは、客観的・簡易なものではあるものの、個人差などもあり、過剰包摂・過小包摂といった問題などを生じることになるのであって、常に、線引きの妥当性の検討のほか、社会状況などの変化を踏まえた見直しなどが求められうるものであることも認識しておく必要がある。

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