2022.05.25 議会運営
第83回 年度経過後の専決処分と遡及適用の是非
出納整理期間は、前会計年度中に確定した歳入の調定又は支出負担行為について、未収及び未払となっている現金出納のみを整理する期間である。したがって、新たに前年度分の歳入調定や支出負担行為を行うことは認められていないことに留意を要する。
そうすると、設問の出納閉鎖期間中において遡って長が法179条の専決処分を行うことは、当然認められていない。
また、甲府地判昭和31.7.24において、議会補正予算を会計年度経過後に会計年度内に議決したこととする取扱いは無効であるとされており、この考え方は長の専決処分においても適用される。さらに、予算は、会計年度経過後においては、これを補正することができないとする地方自治法施行令(以下「令」という)148条に反することとなり、違法・無効な専決処分となると考えられる。
○年度経過後に補正予算につき年度内に議決したこととする取扱いをした場合と当該予算の効力(甲府地判昭和31.7.24行裁例集7巻7号1846頁)
市議会が、追加更正予算(現行法では補正予算)につき、会計年度経過後に会計年度内に議決したこととする取扱いをした場合、当該予算は、令160条(現行令では148条)に違反する無効の予算というべきである。
【令148条】
予算は、会計年度経過後においては、これを補正することができない。
この場合には、無効な専決処分であるから、何らの処分をしなくても専決処分の効力は生じないと考えられる。
そのため設問のように、出納閉鎖期間中に長が前年度における補正予算を前会計年度内に遡って専決処分を行うことはできないと考えられる。