2022.05.25 議会運営
第83回 年度経過後の専決処分と遡及適用の是非
ここで法179条の専決処分は、同条1項に規定があるとおり四つの要件のどれかに該当した場合に行うことが可能である。すなわち、①普通地方公共団体の議会が成立しないとき、②法113条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、③普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、④議会において議決すべき事件を議決しないときである。
そして専決処分の効果は、専決処分を行ったときから将来に向かって議会が議決したのと同様のものとなるのであって、法179条3項における専決処分の報告に対する議会の承認がなされなくても当該効力は有効なものとして存在する。
【法179条】
③ 前2項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。
さて、これらを踏まえて設問について考えると、補正予算は法96条1項2号に規定された議会の権限であり、法179条1項の四つの要件のいずれかに該当すれば長は専決処分を行うことができる。
【法96条】
① 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
二 予算を定めること。
ここで問題となるのは、令和3年度における会計年度期間中には補正予算の専決処分を行わず、会計年度経過後の令和4年5月1日に専決処分を前会計年度内に遡って行うことができるかどうかということである。
専決処分は先に述べたとおり、将来に向かってその効力を生じるものであり、過去に遡って行うことはできない。
また、地方公共団体における会計年度は法208条のとおり、毎年4月1日に始まり翌年3月31日に終わるものとすると規定され、法235条の5で会計年度末までに確定した債権・債務について、現金による整理を行うために、出納整理期間が設けられている。
【法208条】
① 普通地方公共団体の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わるものとする。
【法235条の5】
普通地方公共団体の出納は、翌年度の5月31日をもつて閉鎖する。