2022.03.25 政策研究
第24回 区域性(その4)
広域性の起点
広域性とは、区域を越える人間や人間活動に関わる物資・エネルギー・情報などの交流があることである。区域Xから見て流入であることは、区域Yから見れば流出である。つまり、広域性の見え方は、どちらの区域に起点又は視点を固定するのかという問題である。どちらを起点に選択するかは恣意的である。そして、どちらも起点にできるという意味で相対的である。XにとってはYを含む広域Xがあるともいえるし、YにとってはXを含む広域Yがあるともいえる(図3)。XとYとが一体となった広域Zがある、ともいえる(図4)。
図3
図4
広域性とは、区域間に上下の階層性、又は中心周辺の秩序性を付与することにつながる。中心周辺として広域性が捉えられるときに、後述の圏域性が発生する。XにとってはYを含む広域Xがあると理解されるときには、区域Xは区域Yに対して上位・中心の存在となる。逆に、YにとってはXを含む広域Yがあると理解されるときには、区域Yは区域Xに対しては上位・中心の存在となる。この二つの区域観は、同一住民の中では両立しえないものであるので、区域観は相対的かつ排他的である。
しかし、別に両立しなくても、異なる住民の間では並立することは可能である。それゆえ、広域Xと広域Yとは重複して存在しうる(図5)。もっとも、異なる住民の間でどちらかに合意ができるのであれば、X・Yを通じて、区域観の階層性・秩序性が共有されることになる。つまり、例えば、区域Xは区域Yに対して上位・中心の存在となるという理解が、住民Xにも住民Yにも共有されることはある。その限りで、区域観の相対性は消滅する(図6)。
図5
図6
XとYとが一体となった広域Zがある、という理解は、区域X・Yの間での階層性・秩序性は否定することになる。区域X・Yを超える広域Zにとっては、区域Xも区域Yも対等な狭域性を持つことになる。しかし、広域Zが区域X・Yにとって、包括する点で、上位の階層のように受け取られることもある。