2022.03.10 議会運営
第82回 任期開始時における政務活動費の支出/オンライン参考人の是非
明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦
任期開始時における政務活動費の支出
A市議会では会派に対して政務活動費を交付しているが、このたび議員の任期満了に伴う一般選挙により、議員の任期が5月2日より始まることとなった。ここで改選後の新議員により会派が結成され、政務活動費の交付申請が5月2日以降随時行われているが、この場合に5月分に行った政務活動について政務活動費の支出を行うことは問題ないか。なお、政務活動費の交付に関する条例は次のとおり規定されている。
【政務活動費の交付に関する条例3条】
① 会派に対する政務活動費は、各月1日(以下「基準日」という。)における当該会派の所属議員数に月額○○円を乗じて得た額を四半期ごとに交付する。
② 政務活動費は、各四半期の最初の月に、当該四半期に属する月数分を交付する。
③ 政務活動費の交付に関する条例で一四半期の途中において新たに結成された会派に対しては、結成された日の属する月の翌月分(その日が基準日に当たる場合は、当月分)から政務活動費を交付する。
④ (略)
⑤ 政務活動費は、交付月の10日に交付する。ただし、その日が休日に当たる場合は、その翌日とする。
政務活動費の交付に関しては、全国市議会議長会の参考条例等検討会報告書で参考となる条例・規則が規定されており、多くの市議会でそれに準拠する形で規定がなされていることが多い。
上記の政務活動費の交付に関する条例のとおり、会派に政務活動費を交付するに当たっては、各月1日を基準日とし、会派の所属議員数に条例で定めた月額を乗じて得た額を四半期ごとに各四半期の最初の月の10日に交付することとされている。
ここで問題となるのは、議員の任期が開始した月において、任期開始日が基準日である1日以外の日である場合、当該月の政務活動費の支出を伴う政務活動を行いえるのか、また政務活動費はいつから交付されるのかが問題となる。
まず政務活動費は、本問においては四半期交付とされており、さらにその交付日は各四半期の最初の月における10日と規定されているので、本問においては最初の5月~7月における政務活動費は、基準日である5月1日に議員の任期が始まっていないため、議員としての身分を有することができず、会派も結成することができないため、政務活動費交付に係る会派の結成届を基準日である5月1日に提出することができず、5月~7月分の政務活動費は5月10日に交付を受けることができない。さらに5月分の政務活動費の交付申請を行うこともできない。この場合においては、一四半期の途中において新たに結成された会派としての取扱いとなり、結成された日の属する月の翌月分である6月から政務活動費の交付申請ができ、交付決定に基づき交付されることとなり、8月10日に次の四半期分と合わせて政務活動費が交付されることとなる。
なお5月分の政務活動費は交付されないことから、5月に政務活動を行うことはできるが、あくまで政務活動費の支出を伴わない政務活動しか行いえず、政務活動費の支出を伴う政務活動は6月1日以降となる。
また、5月1日までの改選前の議員による会派が存在し、5月2日以降も同会派が実質的に存続する場合、5月分の政務活動費の交付を5月1日まで存在する前任期による会派が受領しているが、同一会派であるとして当該政務活動費を5月2日以降の同一会派の政務活動に充てることはできない。政務活動費の交付に関する条例で、会派が解散したときは一定期間内に収支報告書を提出することが義務付けられており、議員の任期満了に伴い、議会の同一性、会派の同一性が失われるから、任期満了前後における実態がどうであれ、解散したものとして精算する必要があるため、5月2日からの会派で政務活動費を使用することはできない。
このように一般選挙ごとに議員の任期が条例で規定した基準日から始まらない場合、1月分の政務活動費の空白期間が生じるため、一般選挙の場合においては基準日に限定されない例外規定を設けて対応することが適当であると考える。