2022.03.10 政策研究
第3回 政策(SDGs等)と合理性
「情」と「理」の合理性
社会(地域)は、人の情と理の双方によって成り立っている。情だけでは社会が成り立たず、理だけでは社会が窮屈になる。人や社会の仕組みに情があれば窮屈な社会も乗り越えうる。人や社会にとっては必要な理があれば継続的な社会を期待しうる。
つまり、情と理は相反することもあるが、一方では相互補完性がある。情の背景を知ることは理の役割・あり方を再考することにつながるし、理の役割・あり方を再考することは人の情を豊かにする。その意味において、「情」と「理」には合理性があるといえる。
順番の合理性
政策には「順番の合理性」ということがある。ここにいう「順番の合理性」とは、政策の効果を発揮するためには望ましい順番があるということである。このことは、順番どおりに政策を実施すれば政策の効果を発揮するが、順番どおりに政策を実施しなければ政策の効果を発揮できないということである。
例えば、新型コロナウイルスなどの感染症では、予防がないと患者が急激に増え、感染症が落ち着くまでに時間がかかることになる。そこには、入国管理やワクチン接種など「はじめに予防ありき」の順番が必要となる。また、河川整備は川の下流から行わないと機能を発揮しない。上流から整備をしたのでは整備していない下流で氾濫することになってしまう。
このように、「順番の合理性」は「政策の効果」に大きな影響をもたらす。
他者の存在を知ることの合理性
議論は、多様な意見を持った他者の存在を知りえるという意味において意義がある。そして、他者の意見と自分の意見は違うということを知りえるという意味において意義がある。
その上で、人はこれからどうすればいいかを話し合うことが必要であるが、他者の意見と自分の意見は違うということを知っているということは、議論の効果を高めうる。他者の存在を知ることが、議論の効果を高めうるという合理性がある。
結び
間違ったものの見方が継続して起きていると、やがてその間違ったものの見方が定着してしまう。間違ったものの見方を定着させないためには、どのような主体も自己革新を迫られる。しかし、地域・自治体の自己革新を断念したとき、すなわち決定者(組織)である議会が、決定の負荷に耐えかねて熟議や試行錯誤の取組みを破棄したとき、その地域・自治体には暗雲が立ち込めてしまう。
結論が出なくとも、また議論をしようという気持ちがつながっていくことが必要であり、賛成でも反対でも議論して「ありがとう」という言葉を発することが、お互いにとって大切である。議論を通じて、直接・間接の経験を蓄積し政策の合理性を目指す議会・議員、そして、常に自己革新を続ける議会・議員に期待したい。
(1)選挙や議論とは異なるが、契約者を選定する場合においては、開札の結果、落札者となるべき価格が同じ入札者が2者以上ある場合においては「くじ引き」による落札者の決定が行われる。
■参考文献
◇秋吉貴雄(2015)「政策問題の構造化」秋吉貴雄=伊藤修⼀郎=北⼭俊哉『公共政策学の基礎〈新版〉』有斐閣、67〜84⾴
◇一般財団法人地方自治研究機構「公文書管理に関する条例」〔令和3年11月21日更新〕(http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/019_officialdocumentmanagement.htm〔2022年2月8日確認〕)
◇外務省「持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_gaiyou_202202.pdf〔2022年2月14日確認〕)
◇総務省ホームページ「地方公共団体における公文書管理条例等の制定状況(平成29〔2017〕年10月1日現在)」(平成30〔2018〕年3月28日公表)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000542521.pdf〔2022年3月2日確認〕)
◇⼟⼭希美枝(2011)「〈つなぎ・ひきだす〉って何?」⼟⼭希美枝=村⽥和代=深尾昌峰『対話と議論で〈つなぎ・ひきだす〉ファシリテート能⼒育成ハンドブック』公⼈の友社、5〜23⾴
◇東浦♡町民ファーストの議会を求める会ホームページ(https://ameblo.jp/enari555/〔2022年1月9日確認〕)
◇豊島区議会ホームページ(https://www.city.toshima.lg.jp/368/kuse/gikai/ikensho/2006170929.html〔2022年2月8日確認〕)
◇内閣府ホームページ(https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/about/gaiyou/gaiyou.html〔2022年2月13日確認〕)
◇野口雅弘(2018)『忖度と官僚制の政治学』青土社
◇松下圭一(1991)『政策型思考と政治』東京大学出版会