2022.02.25 政策研究
第1回 自治体議員も人ごとではいられなくなるカーボンニュートラル(前編)
温室効果ガス削減の努力義務は自治体規模によって2段構え
地方公共団体が「目指す」ことを義務付ける根拠は、地球温暖化対策の推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)4条に基づいている。
(地方公共団体の責務)
第4条 地方公共団体は、その区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガスの排出の量の削減等のための施策を推進するものとする。
2 地方公共団体は、自らの事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の量の削減等のための措置を講ずるとともに、その区域の事業者又は住民が温室効果ガスの排出の量の削減等に関して行う活動の促進を図るため、前項に規定する施策に関する情報の提供その他の措置を講ずるように努めるものとする。
同法21条1項では、「温室効果ガスの排出の量の削減等のための措置に関する計画(以下「地方公共団体実行計画」という。)を策定するものとする」とされた。この計画はすべての地方公共団体が対象になる。
さらに、同条3項では、政令市や中核市、施行時特例市などの一定規模以上の地方公共団体は、公共施設や事務事業から発生する温室効果ガスの排出量の削減のための措置のみならず、区域から自然的社会的条件に応じて発生する温室効果ガスの排出量の削減等を行うための施策に関する事項として同項で掲げるものを地方公共団体実行計画に定めることとされている。そして、地方公共団体実行計画に基づく措置及び施策の実施の状況を毎年公表することが求められている(同条10項)。
例えば、筆者の住む埼玉県所沢市では、施行時特例市であることから、地球温暖化対策実行計画は、市の事務及び事業における温室効果ガスの排出量の削減等に関する「事務事業編」と、市域における温室効果ガスの排出の抑制等に関する「区域施策編」の2種類が用意されている。
同計画に基づき、毎年「温室効果ガス排出量実績報告」書を作成し、公開している。さらに計画では、「事務事業編」及び「区域施策編」ともに、削減目標も設定している。
この削減目標を設定したことにより、事実上、排出量取引に必要とされるデータの基礎的な条件を外形的には満たすことになっている。このあたりの話は相当面倒なので、まずはそういうものだ、と理解してほしい。
早速「温室効果ガス排出量実績報告」を確認してみよう
読者の方は、自分のまちの「地方公共団体実行計画」や「温室効果ガス排出量実績報告」を読んだことがあるだろうか。そもそもそんな計画や報告があることを知っていただろうか。
温暖化対策推進法は、意外と歴史が古く、1998(平成10)年に制定。「平成9年、京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)での京都議定書の採択を受け、我が国の地球温暖化対策の第一歩として、国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みを定めました」(環境省ホームページ「地球温暖化対策推進法の成立・改正の経緯」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/keii.html))。その後7度の改正を経ているが、最初の5回は、いずれも京都議定書の履行に関する国内法整備の位置付けでの改正である。最新の改正である2021(令和3)年改正では、「2020年秋に宣言された2050年カーボンニュートラルを基本理念として法に位置づける」(同環境省ホームページ)ことを目的としている。
2005(平成17)年改正では、「京都議定書が発効されたことを受け、また、温室効果ガスの排出量が基準年度に比べて大幅に増加している状況も踏まえ、温室効果ガス算定・報告・公表制度の創設等について」定めた(同環境省ホームページ)。
よって、真面目な市町村では、早速2006(平成18)年から取り組み始めている。まずは、皆さんの市町村の「地方公共団体実行計画」や「温室効果ガス排出量実績報告」を確かめてみよう。さらに冒頭に挙げた質問を一般質問や予算審議などで質問して地球環境問題通の議員への第一歩を踏み出そう。
「勝負の10年」は地方公共団体にとっては「(地球温暖化対策)覚悟の10年」である。ぜひ「自分ごと」として取り組んでいただきたい。
(1) 温室効果ガス排出量と吸収量を相殺してゼロにするということである。排出量をゼロにすることではない。
(2) 炭素に価格を付け、排出者の行動を変容させる政策手法。環境税と排出量取引の二つが代表的。
(3) これらの数値目標については、菅義偉前総理が、米国が主催した気候サミット「Leaders Summit on Climate」においても表明しているが、改めて岸田総理が明言したことで、岸田内閣においても継続していくことが確認された。
(4) 「地球温暖化対策計画」は、地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画。それまでの計画では、2030年の温室効果ガス排出量・吸収量を、2013年比で26%削減であったものを、46%削減に改訂している。政府の計画とはいっても、しっかりと地方公共団体も計画に組み込まれている。
(5) この決定において、「地方公共団体は、自ら率先的な取組を行うことにより、区域の事業者・住民の模範となるとともに、地域内外の多様なステークホルダーとの連携・協働を図ることにより、地域循環共生圏の構築に当たり中心的役割を果たすことを目指す」(57頁)、「地方公共団体の建築物及び土地では、2030年には設置可能な建築物等の約50%に太陽光発電設備が導入され、2040年には最大限導入されていることを目指す」(105頁)との記述が確認できる。