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2022.02.25 政策研究

第9回  常任委員会の効果性を上げて「議会からの政策サイクル」を回す~岐阜県可児市議会の取組み~

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可児市議会の「予算決算審査サイクル」

 可児市議会の予算決算常任委員会は、議長と監査委員を除く、議員20人で構成されている。基本的には、全体会方式で開催されるが、提言に向けた議員間討議を行う際には、3常任委員会単位の分科会が開かれる。可児市議会では、民間企業出身や会社経営の経験がある議員が増えたこともあり、民間企業のように決算に重点を置き、丁寧な審査を行うように改善を繰り返してきた。2021年8月・9月定例会の日程を基に、決算審査のプロセスを説明する。なお、予算審査もほぼ同じ形で行われている。
 
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 可児市議会の決算審査の起点になるのは、前回の予算審議にて予算決算常任委員会の全会一致でとりまとめて市長に提出された提言の対応状況のヒアリングである。議会からの要望で始まり、これにより、議会からの政策提言の実効性が担保されるとともに、予算決算審査が連動し、一連のサイクルになる。
 次に、決算書に基づき、各所管部から全ての項目について説明がなされる。その際、執行部が重要だと認識している80前後の事業については、「重点事業点検報告書」(予算の場合には「重点事業説明シート」)により、実施結果、前年度の課題への取組み・進捗状況、指標の結果、結果分析等(「重点事業説明シート」では、総合計画での位置付け、実施内容、事業期間、目標指標、財源内訳等)が詳しく説明される。この資料も、丁寧な審査を行いたいという議会からの要望で添付されるようになった。決算説明に要する時間は2日間、10時間程度、この間、議員は原則説明を聞くだけで質疑を行わない。説明漏れや再度確認を行うために補足説明を求めることのみ認められている。
④重点事業説明シート

重点事業説明シート
⑤重点事業点検報告書

重点事業点検報告書
 

 決算説明を受けての質疑について、可児市議会では事前通告制を採用している。決算説明後おおむね1週間後に決算質疑が行われる。その間に出された質疑については、予算決算正副委員長と担当事務局職員で内容を精査し、必要がないと判断されたものについては、質疑を取り消す場合もある。質疑の質を高め、議論を深めるためである。質疑は一覧の順に、通告議員が質問事項を発言し、執行部が簡潔に答弁する。質疑、答弁は原則一問一答で、追加質問や関連質問を口頭で行うことを可能としている。事前に「重点事業点検報告書」等で詳しく説明を受けているので、細かい事業内容ではなく、大局的な質疑が出るようになっている。
 質疑が終了し執行部の退席後、決算に関わる議員間討議の動議が出されて認められた場合は、議員間討議を行う。議員間討議で出された課題や提言等は、所管常任委員会ごとに予算決算分科会を設置し付託され、委員会内で議員間討議が行われる。そこでとりまとめられた提言は、委員会最終日に提出され、原則として全会一致で採択する。政策提言は、内容により、委員長報告の中に盛り込む、意見書提出、附帯決議、修正と重み付けがされている。2012年には予算決算常任委員会で附帯決議を行ったことで、「子どものいじめの防止に関する条例」の制定につながる等、住民福祉の向上につながる成果を上げている。
 また、議会からの政策サイクルに監査委員を活用するために、2021年8月・9月の定例会からは、議会の最終日に議選の監査委員からの監査報告と質疑応答の時間を設けることとした。監査委員に集積している情報を議会が入手することで、議会の監視機能の強化を目指す取組みである。
 以上のように可児市議会では、丁寧な予算決算審査で、執行部の「監視、評価」を行うとともに、それを踏まえて積極的な「政策提言」を行っている。
 

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