2022.02.25 議会改革
第27回 議会と時間(2)
それでは、時間が争点化することで、時間にとらわれ、議論が不足する国会と、時間が意識されないほどに定型化し、議論の不足する自治体議会といった様相を呈していることの要因としては、どのようなことがあるのだろうか。
その場合に、国会審議に関して、しばしば指摘されるのが、与党による法案の事前審査と一律の党議拘束の慣行であり、これにより結論先にありきの非妥協的な審議となり、スケジュール闘争となっているとするものである。特に、そこでは与党審査における実質的な審査・全会一致による了承の慣行と強い党議拘束の存在が強調されてきた。しかしながら、与党審査や党議拘束の意味や機能は時代や政治状況とともに変化してきており、例えば、与党審査そのものが言いっぱなしの議論となり、形式化しているとの指摘などもあるにもかかわらず、それが国会審議に代わるような実質的な審査の場となっているとの議論がいまなお繰り返されている(22)。また、党議拘束についても、与党においては、すべての政府提出・与党提出の法案について先議の審議の段階から両院にわたって全面的に拘束が行われている一方で、その強さについては1990年代の政治改革での選挙制度・政治資金制度の改正などを通じ党執行部の統制力が強まっているとはいえ、従来は提出後の与党議員による反対の動きや採決の際の造反・棄権などを生じるとともに、それが不問とされることも少なくなかった(23)。それらの国会の前・外の慣行・時間が国会審議のあり方に影響を及ぼしているのは確かであるが、そのような実態や変化にも目を向けた議論が行われるべきだろう(24)。
他方、自治体議会においても、議案の事前説明が行われており、その場合には、会派や議員への個別の説明が行われるところもあるものの、会議規則や要綱等により協議・調整の場として設置される事前説明会、委員会協議会、全員協議会などの場で議案の事前説明が行われることが少なくない。後者の場合は、国会とは異なり、いわば半オフィシャルな場で行われるものであり、すべての会派や議員を対象とした議会内の仕組みとなるとともに、事前審査ではなく審議の充実に資するための事前説明とされる。関係者の間では、その趣旨や根拠がいまひとつ明らかではないものの事前審査の禁止といったことが語られ、それとの関係が問題とされることもあるようだが、それらが正式の審議機関ではない以上、何らかの意思決定をできないことはいうまでもなく、仮に実際上そこでの了承が議案の提出や審議の前提とされるようなことがあるとするならば、大きな問題だろう(25)。いずれにしても、自治体議会においては、一般的には会派による拘束はあまり強くはないといわれる(26)。
以上のように、審議の時間の短さや不十分さ(先に結論ありきの審議)は、国会に関しては事前審査の慣行、自治体議会に関しては事前説明といった審議の前の段階のプロセスの存在が問題とされるが、事前審査のあり方や機能が変化してきており、また、多くの自治体議会では審議充実のための説明にとどまっているにもかかわらず、そのような見方だけで果たして十分なのであろうか。
この点については、様々なものが複合的に関係しているとも考えられ、もう少し広い視点から総合的に見ていく必要もあるのではないかと思われる。
例えば、日本では、表での議論よりも事前や裏での根回しにより決着を図ろうとする風潮がいまだに強いことがしばしば指摘される。実際にも、与党の事前審査の前においても、広範な根回しが行われており、自治体議会でも、議会の開会や説明会の前に根回しが行われていると聞く。結局、仕組みが制度化すると、その前のプロセスに重点や実質的なものが移行する傾向が見られるのであり、それこそが根回し社会と呼ばれるゆえんでもある。