2022.02.25 議会改革
第27回 議会と時間(2)
7 議会における行政府・執行部の時間
行政府や執行部側にとっても、議案の成立や審議との関係で、議会における時間というものが重大な関心事となる。
日本の場合、内閣だけでなく、自治体の長も議会の招集の権限をもち、議会の招集の時期を決めることができるが、いずれも、議会が開会してからは議会の運営に関与する権限を有していない。自治体においては、大統領制を基本とする以上、執行部側の議会への関与が限定・排除されるのは当然といえるだろう。ただ、実際には、国会の場合と同様に、自治体議会の場合にも、与党会派などを通じて何らかの影響を及ぼしていることも少なくないようである。
国会では、野党による憲法に基づく臨時会の召集要求に対し、内閣がなかなか応じず、訴訟が提起されるとともに、その実効性の確保が問題となっているが、自治体議会については、一足先に、地方自治法の改正により、長による20日以内の招集が義務付けられ、それでも招集されないときは議長による招集が認められるとともに、長の招集を要しない通年会期が制度化されるなど、対応が行われている。
議会における行政府や執行部の時間として特に問題となるのは、本会議や委員会への出席の時間である。
この点、国会においては、内閣総理大臣その他の国務大臣の議院出席の回数や時間が過大であることが欧米諸国の議会との比較によりしばしば指摘されるようになり(14)、激動化する国際政治経済情勢の中で国益を損ねているなどとして、その改革が議論となっているが、大臣出席の慣例と野党による大臣出席重視ということなどもあって、あまり進んではいない。国会審議のあり方を相対視するとともに、国会での拘束による国際的対応や執政・行政執行への影響ということも考慮する必要があるが、それには政治家同士の議論や行政統制といった側面もあるのであり、また、審議のやり方の違いなどを考慮することなく単純に諸外国と比較したりグローバルスタンダードなるものを持ち出したりすることの問題もある。かつては、各省庁の官僚による政府委員の制度が、政府委員に対する質疑中心の官僚主導の審議になっているとの批判などから、政治家同士の議論とするために廃止されたという経緯もある(15)。
自治体議会の場合には、会期日数が限られていることや、委員会については基本的に担当の事務方幹部や課長等による対応となっていることなどもあって、それほど問題とはなっていないが、通年会期の導入にあたっては、議会への出席を求められる執行部側の負担や職務遂行への影響などの懸念が示されたことから、議場への出席を求める場合の執行機関の事務に支障を及ぼさないことの配慮が地方自治法121条で規定されることとなった(16)。ただ、多くの議案が長提出のものとなり、また、行政の監視・統制の必要があるとはいえ、二元代表制の建前からいえば、執行部側依存の審議のあり方については、議論のありうるところではある。
なお、国会においては、質疑をする議員からの通告がギリギリとなるため、答弁を作成する作業を担う省庁の職員が長時間拘束されるとともに、作業が深夜未明にまで及び、そのことが職員の健康やワークライフバランスを阻害することにつながっているとして、働き方改革の観点から、長時間労働の要因とされる「国会対応」が問題視されるようになっている(17)。