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2022.02.25 議会改革

第27回 議会と時間(2)

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(4) ちなみに、全都道府県議会における2018年中の知事提出議案が8,481、議員提出が1,057、委員会提出が227であり、その合計9,765を47で割ると207.8件となる。また、2020年中の全市議会における市長提出議案は9万9,897、議員提出による議案が7,763、その合計10万7,660を市数815で割ると132.1件となり、2019年中の全町村議会付議事件総数は8万5,969で、これを町村数926で割ると92.8件となる。
(5) 東京都下・埼玉県下の市で、人口が7万人台、14万人台、35万人台の団体の議会であるが、いずれも詳細なデータをウェブ上で公開しており、透明性が高い議会と評価することができ、おそらく、議会の活動も活発な方の部類に入るのではないかと思われる。
(6) なお、県議会の分析については、野中尚人「日本の議会における時間リソースと審議パターン─国会・高知県議会とフランス国民議会の比較を通じて─」東洋文化研究17号(2015年)があるが、本文上記のことを裏付けるものともなっている。
(7) これに対し、国会の場合には、政府提出法案の成立件数、成立率、修正率などが注目され、政権や時代による変化、諸外国議会との比較なども行われる。また、野党の政府提出法案への対応(例えば何でも反対の野党など)がしばしば論じられるが、実は、野党の政府提出法案に対する賛成率は、比較的高く、例えば最近の主な野党各会派の政府法案への賛成率を見ると、おおむね、その前身も含めた立憲民主党や国民民主党が80%台前半、日本維新の会が80%台後半、日本共産党が50%台となっている。野党の変遷は激しいが、このような傾向は以前からそれほど大きくは変わっていない。
(8) 国会では、予算や重要法案等の審議では、いわゆるテレビ入りの希望が出されることが少なくないが、テレビ中継される場合には、その中継を担うNHKの番組との調整の関係で中継時間が限定され(基本的に午前は9:00~11:54、午後は13:00~17:00、大相撲中継がない場合には18:00まで延長も可能)、逆にそれに合わせる形で質疑時間が設定されることが少なくない。このような状況は、インターネット中継などが行われるようになっても変わらない。
(9) 町村議会では、2019年中に、休日議会を開催したところが30町村(3.2%)・平均開催日数は1.2日、夜間議会を開催したところが16町村(1.7%)・平均開催日数は2.3日であり、市議会では、2020年中に、休日議会を開催したところが19市22件、夜間議会を開催したところが1市1件であった。
(10) 公務活動と準公務活動の区分は相対的であり、準公務活動は議会外のものとされることもあるが、議会内の活動の中にも準公務活動に該当するものがありうる。
(11) 総務省の地方議会・議員のあり方に関する研究会の第3回(2019年11月15日)において全国都道府県議会議長会の側が提出した意見における「地方議会の実態」に関する資料による。
(12) 村松岐夫=伊藤光利『地方議員の研究』(日本経済新聞社、1986年)70~75頁。調査については、市町村は京都府下市町村、指定都市は京都市、府県は京都・大阪・兵庫・岡山を対象としたものである。
(13) NHKスペシャル取材班『地方議員は必要か 3万2千人の大アンケート』(文春新書、2020年)54~58頁。
(14) 例えば、2012年9月の「日本アカデメイア有志による国会改革に関する緊急提言について」では、日本の総理の国会出席日数が127日(2011年1月から12月)、フランス首相の議会での発言日数が12日(2007年7月~2008年7月)、イギリス首相の議会での発言日数が36日(2008年12月〜2009年11月)、ドイツ首相の議会での発言日数が11日(2009年11月〜2010年11月)であり、その他、財務大臣・外務大臣も日本が突出しているとして、その上限を設けることを提言した。
(15) 1999年に制定された「国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律」によるもので、そこでは国会審議を議員同士の討論形式にすることが目指され、後掲注(19)の申合せ事項では「委員会の審議は、議員同士又は議員と国務大臣・政務次官〔注:現在は副大臣・大臣政務官等〕との間の政策論争が、より活発に行われることが期待される」としていた。もっとも、政府委員制度廃止後も、政府委員や説明員に代えて、政府特別補佐人・政府参考人の制度が設けられ、結局、従来とそれほど変わらないとの指摘もあるが、さすがにかつてのように担当大臣が大事なことなので政府委員に答えさせると答弁するようなことはなくなり、担当大臣が答弁する機会や時間は増えている。また、その際には、副大臣や大臣政務官の制度も設けられ、上記のように委員会審議についてはこれらによる対応も想定され、実際に答弁も行われているが、野党側は大臣にこだわる傾向が強いともいわれる。
(16) 条文上は「議場」とされているが、平成24年総務省通知「地方自治法の一部を改正する法律の公布及び施行について」によれば、通年会期を採用する議会においては、本会議や委員会の開催により執行機関や職員の事務処理に支障を及ぼしたり、費用負担が著しく増加することのないよう、適切に運用されたいとしている。
(17) この問題は、霞が関がブラック職場であるとして国家公務員の志望者の減少の一因となっているともいわれる。なお、国家公務員の長時間労働については、これまで、正確な残業時間の把握もされず、残業代も一部しか支払われてこなかったが、2020年12月に内閣人事局によって実態調査の結果が公表され、すべての残業時間に対して、残業代を支払う方向で調整が進められている。
(18) 当該調査は、2016年6月に発表した第1回調査に続く第2回目であり、その場合に、通告を受ける質問の数は、1日で省全体平均50.9問(最も多い例120問、最も少ない例2問)であった。なお、2018年の第197回国会(臨時会)を対象とした第3回目の調査結果は同年12月に発表されており、それによれば、すべての質問取りが終わった時刻は、全府省等平均で20:19(最も早い時刻16:20、最も遅い時刻23:30)、省内で問表・答弁作成局がすべて確定した時刻は、全府省等平均で22:28(最も早い時刻18:45、最も遅い時刻26:35)となっており、若干改善傾向が見られないではない。もっとも、その状況は議案や追及される事項などによっても異なりうる。
(19) 4党国対委員長の下に置かれた実務者協議における合意「政府委員制度の廃止及び副大臣等の設置に伴う国会審議の在り方に関する申合せ事項」。さらに、2014年5月にも、与野党7会派国対委員長による「国会審議の充実に関する申し合わせ」において、速やかな質問通告に努めることの申合せがされている。
(20) 日本経済新聞2021年1月16日・18日・22日のそれぞれ朝刊。ただ、その後も、国会対応による長時間労働の問題を取り上げる報道が後を絶たないのが現状だ。
(21) 神奈川県議会平成29年第2回定例会議会運営委員会委員会記録(2017年7月5日)。
(22) 与党の事前審査が慣行化した要因についても、政治学では、ヨーロッパ諸国との比較などから、政府の議院の議事運営への関与権の欠如を指摘する見方が有力に主張されてきた。ただ、事前に議案の説明を政府から聴取するというのは、帝国議会の時代から存在していた(しかも議員提出法案については党の機関決定が行われていた)ものであり、また、国会において、それが議案提出には与党の了承を必要とする仕組みとしての事前審査へと発展した要因についても、議院内閣制、内閣の国会運営関与の限定、二院制(強い参議院)、党の統合性・凝集性の低さ、根回し重視、与党や与党議員の役割観、省庁の割拠性と内閣の総合調整機能の弱さ、官僚側のメリットなど様々な要因が複合的に関係していたと見るべきだろう。そして、それらの変化に伴って、与党審査の位置付けや機能も変化することになる。
(23) 従来の中選挙区制の時代あるいは中央省庁改革・内閣の主導性強化の前の時代は、派閥や族議員の力が強く、割拠的であり、法案の提出前だけでなく、与党審査を経ての提出後も様々な動きを生じるようなことが散見された。造反議員に対する統制が強まった、あるいはそれが認識されることとなったきっかけの一つは、与党の事前審査制の見直しが提起された小泉政権時代に、例外的に自民党の総務会の了承を経ることなく提出された郵政民営化法案に反対した衆議院議員を、参議院での否決を受けて行われた衆議院解散・総選挙において公認せず、刺客を立てたことであったともいわれる。
(24) なお、事前審査と党議拘束を問題とする議論においては、与党審査のみが問題とされることが多いが、野党においても、党議の決定の時期はそれぞれの政党によって異なるものの、先議の委員会での採決の前までには、政府提出議案等に対する党としての賛否が決定され、両院にわたり党議拘束がかけられていることにも留意が必要だろう。
(25) 本会議や委員会以外の場で議案について何らかの意思決定を行うことができないことはいうまでもないことであり、仮に行ったとしても議会審議上は何の意味ももたないことになる。おそらく、事実上の事前了承の場とまでなっているようなことはないと思われるが、事前説明が充実した議会審議につながる面があるとはいえ、その場で質問の調整や突っ込んだやり取りなどが行われることについても、議会における実質的な審議の確保の面からは好ましいものではないといえるだろう。
(26) その一方で、自治体議会においては、ボスやドンの存在がささやかれることがあり、NHKスペシャル取材班・前掲注(13)52~54頁によれば、ボスが存在する場合には、首長がボスさえ押さえてしまえばあとはトップダウンで原案が可決されていくことになるともいう。
(27) 政府への政策形成の一元化を目指した2009年の民主党連立政権の下では、政権交代と同時に、与党審査が廃止されたが、政府に入らない与党議員の役割などが定まっていなかったことなどもあって、それらの議員が政策にかかわれないことに不満を抱き、内閣提出法律案への関与を求めるとともに、委員会を舞台に修正を模索する動きなども見せたことで、すぐにその見直しを迫られることとなった。結局、政府と与党をつなぐ役割を期待された各省政策会議は廃止され、党の政策調査会が復活することとなり、再設置された政策調査会は、当初は審査・決定機関ではないとの位置付けがなされたものの、なし崩し的な与党審査の復活につながることとなった。

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