2022.02.10 政策研究
第2回 政策(子育て支援)と比較
災害経験の(有無)比較
人は災害が起きても時間がたつと忘れてしまうことがある。自治体政府(議会・行政)は組織としてみれば、退職する職員もいるし、新しく職員になった者もいる。災害を経験している職員も業務内容が大きく変わっている場合が多い。そのため、災害に遭遇したときには、訓練が役立つとしても、そこには大なり小なり謬(びゅう)を起こすことが考えられる。
大災害では、他の自治体等(個人・法人・自治体・国等)からの支援が必要となる。支援を円滑に受け入れるためには、平常時には、自ら災害訓練を行うとともに、他自治体(被災地)の応援に出向くことが求められる。被災地の応援に出向くことで様々なことが分かる。例えば、応援する体制である。災害時の応援は、復旧時は食料・テントなどを持参する自己完結型が基本であるが、復興時には自己完結型でないことが多くなる。
また、被災地の市民を受け入れることは、受け入れる側の自治体にとっても意義がある。被災地の市民を受け入れるためには、どのような情報環境や医療・看護・介護・保育・学校機能を提供すればよいのかを考え調整し実施することが求められる。このような体験は、自らの自治体が被災し、市民が他の自治体に受け入れてもらうときに役立つ。
そして、被災地に応援に行く職員を決定する場合も、被災者を受け入れる際に担当する職員を決定する場合も、人事担当課が大きな役割を果たすことが見込まれる。大災害になるほど、応援体制は大きくなるし長期化する。応援体制が大きくなり長期化すると全庁的な対応が必要となるのである。
西出順郎は、「応援職員の得た貴重な経験的知見を個人の暗黙知から組織の形式知へと如何に転換させるか、これが自治体全体の今後の課題といえよう」(西出 2021:141)と述べている。しかし、ここには被災地に応援に行った職員だけでなく、前述したような被災者を受け入れた職員の「経験的知見を個人の暗黙知から組織の形式知へと如何に転換させるか」ということも含まれよう。
そして、これらのことは議会ないし議会事務局にも当てはまる。一人の議員が得た貴重な経験的知見を一人の暗黙知から議会の形式知に転換し、一議会の形式知を全国の自治体議会にいかに広げるか、これが自治体議会全体の今後の課題といえる。