地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2022.01.28 議会改革

第26回 議会と時間(1)

LINEで送る

(3)会議時間
 自治体議会の会議規則では、標準会議規則に倣い、会議の開閉時刻を規定しているのが一般的であり、この会議を開く時間帯は「会議時間」と呼ばれている。
 会議時間の設定は、会議を規律正しく行うためのものであり、会議公開の建前からも会議規則で規定しておくべきものとされるとともに、自治体議会の関係者の間では、これを厳格に解し、会議時間は、議会が適法に会議を開くことができる時間帯であり、議会の活動能力の限界を画するものであるとの理解も見受けられる(24)。会議時間がルール化されていることは会議をしっかりと効率的に行う有効手段となり、時間の確保にも資するものであるが、案件や議論の状況等によって左右されるところもあり、会議時間を変更することもそれなりにありうることも考慮すれば、それほど厳格な規定であるとも思われない。例えば、会議時間を午前10時から午後5時までと規定したところで、常にその時刻に開議して閉議するわけではなく、会議規則でも、その例外が認められているのが一般的である。
 この点、都道府県議会では、標準会議規則が、会議時間の繰上げや延長は議会の議決により又は議長において必要と認め会議に宣告することによりできるとしていることから、そのような規定を置くところが多いようだ。この場合、招集日の開議時刻の繰上げや閉議後あるいは当日の会議非開催の場合の翌日の開議時刻の繰上げの必要が生じても、それは不可能となる。これに対し、市議会・町村議会では、標準会議規則が、議長は必要があると認めるときは会議時間を変更することができるとしており、会議規則でこのように議長に大幅な裁量を認めているところが多く、この場合、開議時刻の繰上げについては、議事日程に記載することで足りることになる。なお、開議時刻の繰下げについては、いずれの実務でも、会議時間内であればいつでも開議可能と緩やかに解されているようである。
 他方、閉議時刻を延長する場合については、議会の議決又は議長の宣告による都道府県議会だけでなく、市町村議会の場合も、会議で議長が宣告することが必要と解されてきており、このような手続を経ることのない閉議時刻経過後の会議は違法となるとの理解もある。ただ、場合によっては会議で宣告する余裕がないまま又は休憩中に閉議時刻を経過することもありうるため、その柔軟化を主張・模索する向きもあり、中には、衆議院や参議院に倣って、「会議は〇時に始める。ただし、議長が必要と認めたときは、この限りでない」と開議時刻だけ規定するところも見受けられる。この場合には、午後12時まで会議を有効に開くことができ、仮に午後12時以降に及ぶ場合には延会等の手続をとってその日の会議をいったん閉じて翌日の0時から会議を開くことを議長が宣告することにより、翌日0時から会議を開くことが可能となる(閉議時刻が規定されており会議時間の延長の宣告をした場合も同様)。
 ただ単に標準会議規則に準拠するのではなく、開議時刻や閉議時刻を会議規則で定めることの意義について考え、それぞれ必要と判断されるルール・手続を定めることが重要だろう。

(1) 議院内閣制の場合には、政府と与党は一体的に捉えられることが多いが、与党の時間に対する対応については、その立ち位置、特に政府との距離によって相違してくるところがある。大統領制の場合には、与党という存在や位置付け自体が微妙ともなりうる。民主主義に関する歴史的な伝統やその型などによっても、異なりうる。
(2) 例えば、時間という面から委員会の独立性や専門性を確保するものとして、常任委員会の委員の任期を議員の任期とするということがある。国会法ではその建前が維持されているのに対し、地方自治法でその例外を認め、条例ではその例外の方が定められることも少なくなく、委員会に関する規律の緩和・簡素化の要請などもあり、2012年の改正でその規定自体が削除されたが、委員会条例で常任委員の任期を議員の任期とするところは少ない。委員会条例上、常任委員の任期を議員の任期4年としているのは、都道府県議会では2県・4.3%、市議会では8.5%、町村議会では28.3%となっており、本会議中心といわれる町村議会の方が多くなっている。また、自治体議会の場合には、委員会審査への介入手段として、委員会の中間報告だけでなく、審査期限を付すことができるとする規定を会議規則に置いているのが一般的である。
(3) 時間に関する規定が、実際上どのような意味をもち、機能を果たすかは相対的なところがある。例えば、衆議院の優越を定める憲法59条4項の「60日以内」という時間を考えてみると、参議院にとっては、60日以内に議決しなければ衆議院によって「みなし否決」とされうるということでは、時間の制限であるが、逆に、60日間は時間を確保できる、引き延ばすことができることにもなる。他方、衆議院の側は、60日を超えれば参議院での時間を打ち切ることができるが、逆に、参議院での継続審査や廃案を回避するためには、会期内での60日の期間を確保した上で、参議院に送付することが必要となる。
(4) 例えば、ヨーロッパの議会で見られるような、拙速を避けるために審議時間を確保したり、少数派の時間を確保したりするような規定があまり見られず、その一方で、法案審議時間の上限の設定(プログラム化)や審議打切り動議(クロージャー)などの多数派あるいは政府が法案の成立を図るための手段に関する規定も少ない。
(5) これについては、自治体議会では「議事日程のない会議」などと呼ばれているようであるが、その場合でも、議事日程を当日会議を開くまでに定めることが必要とされる。このほか、自治体議会では、会議規則で、やむをえないときは、議長が報告することで議事日程の配布に代えることも認められている。
(6) 「議事日程のないところに会議なし」ともいわれるが、自治体議会の中には、会期当初に、会議予定表を作成し、場合によってはそれを議決し、議事日程に代用しているところもあるという。形式にあまりこだわるべきではなく、その内容にもよるが、それは会議規則で定める議事日程には該当するものではないと見るべきだろう。西澤哲四郎『地方議会の運営Ⅱ』(教育出版、1970年)262頁参照。
(7) 国会の場合には、委員会議室の確保、本会議との調整、衆参の同じ所管の委員会の日程調整などのために定例日が慣例として設けられてきたといわれるが、それがスケジュール闘争を招く一因ともなっているとの指摘もある。このため、対決法案や重要法案の迅速・機動的な審議のため、定例日に縛られない特別委員会を設置するようなことも行われている。これに対し、自治体議会の場合には、通年議会の場合を除き、それぞれの会期が短いことなどから定例日を定めておく必要性はあまり高くはなく、定例日が絡んだ時間的な争いといったものもほとんどないようである。なお、定例の日や時間を規則等で定めることは、比較法的には珍しいことではない。
(8) なお、国会では、実質的な決定を行う委員会理事会において全会一致の慣行があり、これが野党会派に有利に作用してきたとの見方が有力であったが、近年においては、委員長職権による委員会の開会、議院運営委員会での採決による本会議の設定といったことも少なからず見受けられるとともに、理事会や理事懇談会に先立ち、与野党筆頭理事により調整が行われることも一般化してきている。また、議事運営にはコンセンサス型とマジョリテリアン型があり、国会では、かつては前者の色彩が強かったのに対し、近年は政治状況の変化等もあって後者の色彩が強まっているといわれる。
他方、自治体議会については、議事運営に関する権利として、地方自治法114条が開議請求について規定しているが、その要件は議員定数の半数以上の者とされ、少数派による行使は困難な状況となっており、委員会の招集請求の要件も標準委員会条例では委員の定数の半数以上とされている。これに対し、国会においては、本会議の開会要求の規定はなく、委員会については、委員の3分の1以上による開会要求がそれぞれの議院規則で規定されている。
(9) 都道府県と市では、すべての議会で議会運営委員会が設置されており、町村議会でも、908町村(98.1%)で設置され、未設置は18町村(1.9%)にとどまる。
(10) 例えば、都道府県では、各派代表者会を設けるところが44都道府県となっており、全員協議会も31の府県で設けられている。他方、会議規則で協議又は調整を行う場を設置しているのは、市議会では、595市(73.0%)、町村議会では794町村(85.7%)となっている。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 428

日本銀行開業(明治16年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る