2022.01.28 議会改革
第26回 議会と時間(1)
第3に、時間の絶対性・客観性と相対性・主観性である。
時間は、時代を超えた万国共通の数値であり、絶対的であるとともに、客観的な指標となるものである。しかし、その一方で、その受け取り方はそれぞれの人によって異なりうるのであり、その点では相対的なものでもある。議会における時間に対する態度や見方は、国、時代などによっても異なるところがある。
とりわけ、議会におけるアクターにとって時間は重要なファクター・手段となる一方、それぞれのアクターによって時間がもつ意味も時間への対応・評価も相違し、時間をめぐりしばしば対立することになる。例えば、政府、与党、野党によって時間の意味も、それに対する姿勢も異なってくるのであり、政府・与党にとっては提出議案のできるだけ速やかな成立や審議負担の軽減を望むのが一般的であるのに対し(1)、野党側はできるだけ時間を確保することを望むのが通常であり、時間の引き延ばしを図ることもある。しばしば、政府・与党と野党の間で、審議にかけた時間に対する評価が相違することもある。ただし、時間に対する態度は、国民の審議や時間を見る目にも影響されるとともに、時間がもつ意味は、政治状況や立法状況等によっても違ってくる。同じ長さの時間がそれらによって別の意味内容や評価となることもある。
さらに、どのような議会観に立ち、議会の機能として何を重視するのか、あるいはどのような観点から時間を指標として用いるかによって、議会における時間の評価は異なる面があるのであり、政治や国民の間における議会観や議会像は多様化してきている。
以上の点において、時間が主観性を帯びる面があることは否めない。
ところで、議会における時間についても、過去・現在・未来に区分される。
時は、とどまることはなく常に流れ続けており、未来はやがて現在となり、現在はすぐに過去となる。そのような中で、議会は、審議・決定を繰り返す。
議会においては、歴史という時間軸も重要な意味をもつ。議会制度自体が、歴史の積み重ねの中で形成され、各国に広がり、発展してきたものである。現在の議会は、過去から引き継がれてきたものであり、議会においては、先例が、過去の積み重ねと先人の知恵・プラクティスとして大きな意味をもち、重要な役割を果たしている。他方、議会を取り巻く政治状況や社会経済状況は絶えず変化しており、制度や先例が時代に合わなくなるとともに、障壁となることもあるのであり、それらについては、やがて変更を迫られることになる。議会活動は、伝統と創造の中で営まれる。
議会と時間ということでは、選挙が大きな区切りとなることはいうまでもない。議会は、選挙により構成を新たにし、新たな時間をスタートさせる。しかし、それは、過去を引き継ぐものでもあり、そこでは継続と変化のバランスのとり方が問われることになる。また、選挙は、過去の評価と未来の選択となるものであり、政治は、次の有権者の選択を意識して活動し、成果をアピールし、攻防を繰り広げることになる。ただし、選挙を意識することは、将来をにらむものではあるが、ともすれば近視眼的になりがちともなる。