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2021.12.27 議会改革

第25回 自治体議会の権限について改めて考える(3) ─総括的な考察と展望─

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  その権限とされているものを表面的に眺めれば、そのようにいえそうであるが、あまり強くはないと見るのが一般的だろう。それは、長等の執行部との関係・対比から実質的に見た場合にはということである。
 そして、そこで特に問題とされるのが、長の再議(拒否権)と専決処分の権限である。再議制度は、大統領制に特徴的な仕組みの一つではあるが、長は議案の提出権も有しており、また、違法再議では、最終的には司法的な解決が図られるとはいえ、第一次的には長の側の解釈・判断によることになり、会議規則違反までその対象とされている。さらに、専決処分においては、法律上要件は限定されているとはいえ長の判断で議会の権限を代行することになり、議会の側がしっかりと問題意識をもたなければ、安易にそれに流れがちとなるような状況も見られないではない。議会と長の対立による行政の停滞や混乱を回避する意味はあるとしても、議会の役割のあり方や機能に影響を及ぼす面があることは否めない。
 しかしながら、もっと背景的・根本的な要因ということでは、行政国家現象の進展ということに目を向けるべきだろう。
 すなわち、現代において国家は福祉国家・積極国家の様相を強め、人々の生存・生活や社会経済活動は国家の関与なくしては成り立たなくなっており、それは新自由主義的な潮流が強まり、国家の役割の見直しが進められている中でも、基本的に変わるものではない(17)。このような国家状況においては、行政の役割が強まり、行政の側に権力、情報、各種資源が集中することになる。地域における政策や行政は、執行部を中心に展開され、予算だけでなく、条例も執行部の政策推進の手段となり、議案の多くは、長から提出される。  これに対して、前回の資料や今回の検討でも見てきたように、議会の権限も強化されてきているが、行政の拡大強化とそれへの実質的な政策決定機能の集中がもたらされることにより、議会は強大化する行政を前にして呻吟(しんぎん)し、その機能の低下や不全などもいわれてきているのである。
 すなわち、そこで見落としてはならないのは、議会の権限・権力は、建前や制度の上では、衰退というよりは、むしろ増加し続けているにもかかわらず、行政との関係において相対的・実質的・全面的に低下してきているということである。そして、行政との関係における議会の相対的な地位の低下といった状況は、ひとり自治体議会の場合に限らず、国会、さらには世界各国の議会に共通する現象といえる。
 このほか、政党の発達による議会の形式化・形骸化の問題にも触れておく必要があるだろう。いうまでもなく、政党は、議会政治の駆動装置となるものであり、政党が現実政治に果たす役割は大きい。ところが、皮肉なことに、現代議会政治に不可欠な存在であるはずの政党が、行政とも結び付くことによって、逆に行政府・執行部の強化の傾向をもたらし、議会の後退を助長する一因ともなっている。また、政党が選挙、議会運営、意思形成など政治のあらゆる場面で大きな力をもつようになると、政党は、その党員である議員に対し党の意思に従うことを要求するようになり、その結果、議員は政党の投票マシーンと化し、議会の審議は創造的な性格を失い、形式化・形骸化を招くことにもつながりうる。
 これは、議院内閣制の場合だけでなく、首長制の場合にも見られるものであり、そこでは、首長の党派と議会の多数の党派が一致するかどうかが大きな意味をもつことになる。日本の自治体議会の場合には、大規模な自治体では政党化が進む一方、小規模な自治体では政党化はそれほど進んでおらず、また、会派制を採用する議会でも、政党と会派が一致しないことが少なくなく、会派の統制はそれほど強くはないといわれる。さらに、地域においては党派性を帯びるような問題はそれほど多くはないともいわれるが、それでも、上記のことも念頭に置いておくことが必要だろう。
 以上のようなことから、議会の審議の場は、同意の調達と同時に説明と批判、監視の場となっていく傾向が見られるのである。住民自治の実現を担う機関として議会の強化は必要不可欠となっているが、このような状況にどう立ち向かっていくのかを考えることは不可避となる。

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